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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
411/823

2/14 バレンタイン6

 空とのんびり帰る。

 道のりは少し、遠回りぎみで人の通り少ないルートを選ぶ。

 一緒にいたいんだよな。


 空に意識を傾けてるのに木野江の言葉やそういっちゃんの言葉がゆらりと過ぎる。


 俺が引っかかってるのも俺ではどうしようもないこと。

 本当にそうなのかなと思わなくもないけれど。

 どうにもならない部分が多いのも確かだ。

 たぶん、ばれてたとしても空は何も言わないと思うんだ。

 一緒にいてくれる。

 言いたいことがうまくまとまらない。


 一緒にいる時間が好き。

 そばにいるのが好き。

 たぶん。

 他に対する好きとは違うと思う。


 深呼吸。


 視線を感じる。


 とりあえず。


 何はなくとも。


 うう。ためらう。 


「うーんと、心配かけた?」

 聞いてたという前提で聞いてみる。

 それに、他にも心配はかけてる気がする。

 うーん。

 気がするじゃなくて間違いない。かな。

 あんまりひと気がないのを確認して後ろからぎゅっと抱きしめてみる。

 かばんとクローバーの入った袋が少し邪魔。

「俺さ、ほら、時々うまく繋がんないからさ。わかんなくなって馬鹿みたいなことでへこんでさ、でも、今回は少しは得ることがあったかなぁって思う」

「得ること?」

「うん。空が好きで、空に俺のそばにいて欲しい。ってこと。かな」

 空の手が俺の腕に触れる。

「怖いし、まとまらなくなるし、わかんなくなるし、俺は俺のことは嫌いだ。でも、空が好きな俺なら俺も少しは、……嫌いにならずに済むかもしれない。あんまり自信はねぇけど」

 見られるのは照れ臭いからぎゅっと少し力をこめる。

 冷えた髪が頬に冷たい。

 川からの風も雲の流れも今は空だけしか見えない。

「かっこ悪いトコなんかさ、これ以上見せたくないんだけどさー。ホントは空にはかっこよくできてるトコだけを見てて欲しいと思う」

 そんな風に思うんだよ。

 でもさ。

 一番好きなのは幸せそうに笑ってる空。

 それをできることならカッコ良く守りたい。

 そう、でもさ。

「俺は空のいろんなトコが見たいんだ。困ってるところも泣いてるところも怒ってるところも照れてるところも。俺だけが知ってる空が欲しい。でも、だからさ、俺だけがそう、じゃズルイよな?」

 少し呼吸を整える。

 こう言う自己説明マジ苦手かも。

「進めるか変われるかなんかわからないし、空にわかってもらえるようにうまく説明できるかもわかんねぇ、だって自分でもよくわかんないから」

 触れてくれてる手の感触とぬるまってきた髪の感触。

 俺は弱いから。

 きっと空ねぇに抱きしめられたら何も言えなくなるんだ。

「まぁ、熱出した俺ってウザイって千秋も言うしー。あんまおぼえてねーしー。基本体調はそんなにくずさねぇし。あ、今ちょっとメンタル崩れてるって涼維にまで言われた。ひどくね?」

 ああ、ちがう。こんな風に誤魔化したいんじゃないんだ。

「ごめん、ちょっと待って」

 どうしてこう逸らしたがるのか、自分でももどかしい。

 だから、気持ちを整える。

「それにさ、よく考えたらいまさら感もあるよな。いろいろヘマ既にばれてんじゃん。だから? さ、一緒にいたらそれ以上もっと嫌なトコが見えてくると思う。そんな俺でもそばにおいてくれる?」



 ダメな俺でも一緒にいてくれる?

 結局、どこか茶化したような言い方。



 静かに照れたり困惑しながら聴いていてくれた空の耳を軽く食む。


 だって気がついたら、めちゃくちゃ照れ臭くて、もし、空に冷静に対応されたらパニクってしまいそうで、って、充分パニクってる?

「ひゃぅ」

 って可愛い声が聞こえて、ついその耳元に囁く。

「空の声、可愛い。もっかいしていい?」

「ぁうぅ」

 照れと微妙に含まれた不満の声。




 可愛すぎて笑う。拘束だったろう腕の力を緩めて、もう一度耳元に囁く。


「さぁ、もう一度食べられたくなくば、チョコを渡すのだ」

 そう、今日はバレンタイン。

 ここはもらえるって期待していていいはずだ!

 それとも、もっかい空の耳を味見した方が空、嬉しいかな?




「あげない」



 ぽつっと言われた言葉に焦る。


 ないじゃなくてあげない。


 あるのにくれないってことだ!

「空ぁ? 怒った?」

 スリスリとじゃれる。

「それとも、もっかい耳をあじ……」

「だぁーめ」

 真っ赤になって言われて、可愛いとしか思えない。

 プイと振り払われて。

 ちらりと覗かれて、ドキドキする。

「空のチョコレート欲しいなー」

 そっとつかまえた指先にキスをする。

「すっごくすっごく欲しいんだけどなー」

 そのまま手のひらにもキス。

 作ったのは昨日のはずだから味なんか残ってないけど、手作り。空のこの手で作ってくれたんだと思うと愛おしい感じ?

 見上げると朱に染まった空が可愛かった。



 貰ったチョコに喜びつつ止まってた道を歩き出す。

 幸せ時間。

「そーいえば今年はさぁ、ミホちゃんはくれなかったけど、レイちゃんがチョコくれた」

 そういっちゃんと別れる前に現れた少女はパタパタと慌ててて。

 いろいろとチョコを撒くのが忙しいようだった。

「ねぇちゃんたちやミホちゃんとか以外にチョコを貰うことってほぼないからちょっと、うーん。かなり? 嬉しかった。一番は空のだけどさ」

 なんだかじっと見られてて。


「空のチョコは期待してたし。他から貰えるって思ってなかったからさ。あ。他からのチョコ貰わない方が良かった?」

 だって毎年、貰えることないから、かなり嬉しくて、彼女の前ではしゃぐってやっぱ、失敗?

 ゆっくりと横に揺れる頭。

 ほっとする。

「ま、そういっちゃんにも渡してたから、俺にっていうより、カラスマントとノワールにくれたんだと思うけどね」


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』から青空空ちゃんを


『精霊憑きの新天地?』より

話題として如月レイちゃんを

お借りいたしました。



鎮、気持ち的に邪魔になってるクローバーをどうする気だよ

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