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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
408/823

2/14 バレンタイン5

 ふんわりしたサーモンピンクのワンピース。

 ツインテールにも同色のリボン。

 嬉しそうに見せてくる鈴音ちゃんはかわいい。

 芹香ではそうはいかない。芹香の場合は『私が可愛くて似合っているのは当たり前。褒め称えなさい』オーラが基本にあるから。

 普段しないおしゃれをしてさりげなく『褒めて』欲しそうな鈴音ちゃんはかわいらしいと思う。

「涼維おにいちゃん、どうぞ」

「ありがとう。鈴音ちゃん。今日はかわいいね」

 ふわふわとリボンが多めで鈴音ちゃん自身がラッピングされてるみたいだとも思う。

 クリスマスもかわいい格好をしてたと思うけどね。

「ママがね、贈ってくれたお洋服なの!」

 満面の笑顔。

「ふぅん。似合ってるな」

 そう言って隆維が鈴音ちゃんのチョコを入れてる籠から勝手にひとつ取り出す。

「いただき」

 そのままぺいっと口に放り込む。

 その動作の流れで、鈴音ちゃんの髪のリボンを外してしまう。

 代わりに白と茶色のツインカラーのリボンをすばやく結びなおす。

「バレンタインだからチョコ色リボンなー」

 少し驚いた表情で隆維の動きを見ていた鈴音ちゃんがリボンを気にする。

 ほんとに隆維はいきなりなんだから。

「似合ってるよ」

「……うん」

 フォローするとはにかんだ笑顔。

 小さい子ってかわいいと思う。

 みあやのあも誰かにチョコを渡す時に自分のかわいらしさとか気にするようになるのかな。っと思うとちょっと嫌な心境になった。

 芹香はどっちかって言えば自分がおいしいチョコを食べるのが嬉しそう。


『バレンタイン』=『自分がチョコをもらえる日』って思ってたみたいだし。


 誰も誤解を解かなければそう思ってるよね。


「あっちにチョコ菓子あるし、食いに行くだろ? とりあえず、チョコこぼさないようにエプロン」

「うん。取ってくるよ。紙エプロン取ってくるから待っててね。鈴音ちゃん」

「そーいえば天音は?」

 聞いてる隆維の声を聞きながら紙エプロンを取りにいく。

 かわいい服にチョコ染みとかって切ないもんね。


 紙エプロンが置いてあるそばで千秋兄が微妙な表情で芹香と向かい合っていた。

 その先にいるのは、美丘愛菜。それと、もう一人。

 ゆるいウェーブの入った黒髪を背中の中ほどまで下ろしている少女。モノトーンのヘアバンドはクリアカラーのラインストーンフラワーモチーフの飾りで凝ってるなと思う。

 サーモンピンクのワンピースに黒いリボン。かわいい格好なのに不機嫌そうなその面差しは、

「あまねちゃん?」 

 じっと髪を見てると苦笑された。

「ウィッグなの」

 そう言って軽くヘアバンドを触る。

 髪の長さが違うとかなり印象が変わると思う。

 何も言えず、見ていると千秋兄に軽く叩かれた。

 そしてちょっと思う。

 俺、ロングヘア好きなのかな?

「えっと、印象ちがってびっくり」

 少しむっとした表情。

 そう、剣道大会の日もクリスマスも普段の印象とは違うかわいい系の服を着た天音ちゃんは見ている。

 それ以外の日はいつも動きやすい男の子の服を着ているのは確かだけど。

「見蕩れちゃって反応遅くなっちゃった。すごく、かわいいよ」

 正直に伝えると天音ちゃんの頬がピンクに染まる。

 少し困惑気味に視線を逸らし、俯いて「ありがとう」とか言うものだから妙にこっちもどきどきする。



 これがギャップ萌えってやつ?



 気恥ずかしくて俺も視線を逸らすと、『あれ?』っと、言い出しそうな芹香の不思議そうな表情とかち合う。


「そ、それも鈴音ちゃんと同じでお母さんからの贈り物?」

 慌てて話題を振る。

「うん。生前にいつ届くか内緒の贈り物を贈って欲しいってお友達にリクエストと手紙を預けてあるらしいの。だからいつ届くかはわからないんだ。今回は昨日届いてて、私は、着る気、なかったんだけどね、見つかっちゃって」

 困ったように笑う天音ちゃん。

 サイズとか今の流行とか好みとかは例の情報網できっと筒抜けなんだろうなと少し冷めた気持ちにもなるけれど、素敵なお母さんだなと思う。

「似合ってると思うよ。天音ちゃんのために、考えてくれる素敵なお母さん、なんだね」

 天音ちゃんはお父さんのこともおじいさんのことも好きだ。

 見ているとおじさんも総督も宗一郎さんも公志郎だって家族を厳しくも大切にしているのがわかる。




「ありがとう。涼維君」



 迷いのない笑顔でお礼を言われてどきりとする。


 それと同時にずきりとくるこの痛みはなんなんだろう?



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