2/14 バレンタイン4
天音
ふらっと教室を出る。
チョコを交換する甘い匂いにやられたわけでもない。
ぱたりと小柄な先輩と向かい合う。
淡い色彩ですこし不思議な印象の如月先輩だ。
清水先生の裏イベントでの白スク仲間だった。
ぶつかりかけたせいかアワアワしている。
レイ先輩の方だと思う。
「大丈夫でした?」
ふっとアワアワするのをやめたかと思うと照れ臭そうに笑う。
「うん。えっと驚かしちゃった、かな?」
「ハイ」
「えっ!?」
「私が驚かせちゃいましたよね。大丈夫ですか? 先輩」
「なんだ。よかった。ビックリしちゃった」
アワアワと反応する先輩はどこか可愛らしい。
既視感っていうんだろうか?
そういう反応をする気がしたのだ。
だから、思いついたのかもしれない。
「じゃあ、ビックリさせてしまったお詫びに、あの、チョコをどうぞ。うるさいのがいるんでナイショでお願いしますね、レイ先輩」
「うるさいの……」
なんだか「あー、わかる」と言い出しそうな先輩の表情にちょっと笑うと先輩も笑い返してくれた。
『ね』
タイミングよく、ハモって笑う。
空気は柔らかい。
「ありがとう」
先輩が照れ臭そうに受け取ってくれる。
「こちらこそ」
空気はほのぼの。
「レイーー」
呼び声にはたっとして私の様子を伺うレイ先輩。
「ルナ先輩が呼んでますね。私もそろそろ教室に戻りますね」
「あ、うん。えっと、ありがと」
『それじゃあ』とお互いに軽く頭を下げて別れる。
こう言っちゃいけないんだけど、反応がおじさんを思い起こさせるのだ。
少し、そう、周りに巻き込まれて『あっちゃー』な状況に『仕方ないね』と柔らかな笑顔を浮かべて何とかしちゃうあの人に、似てるのだ。
男のひとに似てるだなんて失礼なんだろうな。
でも似てるのはどっちかて言うと人間性?
悩まなくもないが、まぁいいかとも思う。
それよりも、課題は鈴音だ。
昨日のチョコ作りは本当に海さんに手間をかけてしまって、もう、記憶から消し去りたいし、忘れてほしい。
『精霊憑きの新天地?』から
如月レイ先輩、ルナ先輩
青空海ちゃん(お名前)
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』から
お借りしました。




