2/13 バレンタイン前日⑤
闇色の花
BLっぽいかも?(当人達にその意図はない。
暗め
チアキに教えられた場所。そこは外から鍵のかかる部屋。
『隔離部屋』
チアキはそういった。
窓はブラインドが下りており、全体的に手狭でそっけない。
部屋の大半占めるベッドに眠る弟を覗き込めば半覚醒だったらしく小さく口元が動く。
『水』と動いた。
サイドテーブルの水差しの水を含んで与える。
巻きつくように動く手は熱い。
熱で揺らめく瞳。
よほど喉が渇いていたのか水を求める動きは貪欲だ。
「シー」
「……もっと」
小さく囁かれ強請るように擦り寄られる。
再び、落とす口付け。
軽く不満げに押しのけられる。
喪失感が広がる拒絶。
「みっず」
咳込み気味に漏らされる言葉に慌てる。
飲み終えればいらないとばかりにぽいと放り出される印象に苦笑がもれる。
「シー」
愛してるよ。
私のものだよ。
少しでもお前にとって私は価値がある?
傷つけさせたりしたくない。
「シー」
お前はテスと自分、生き延びるのならどちらであるべきだと考える?
あの女はそれを思う。
あの女はお前に生きろと言うだろう。より壊れろと望むだろう。
テスを御せぬと考えるから。
壊れたお前なら御せると考える。
「だいす……き。そば、いて」
閉ざされた場所で心細さと熱で紡がれる言葉。
あの少女がお前に光を与えるならそれがいい。
少しでもお前が安らげるならそれでいい。
対価がいる。なら、テスを与えればいい。
あの子はお前たちを守ろうと自分を縛るだろう。
ちゃんと言い含めればあの子は理解する。
自らの役割だと手にした檻の鍵を手放すだろう。
あの女の望むように。
そうお前は望んだ。
変わらぬ時を。
守りきれるかどうかはわからない。
共に過したのは三年。
テスを忘れるのに足る時間は何年?
死に別れるわけじゃない。
テスは望まれた位置で大切にされ過すだろう。
一人欠けることをお前は許してくれるだろうか?
すべてを失わずにいられるなんて約束できない。
そこまでの力が私にはない。
あの女はどちらもが存在する状況を許したくないんだ。
その位置に立つことのできなかったがゆえに。
触れられる気配。
熱を含む手に顔を引きおろされる。
水?
「あのね。ランバート」
幼くけだるげに囁く声。
「シー?」
「花にね、伝えてね。マナはダメだって」




