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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
399/823

2/13 バレンタイン前日②

 裾野の前田さんちに呼びかければよーこさんが出てきてくれる。

 とりあえず、挨拶をしてきょろきょろと雪姫ねぇちゃんを探る。

 いる? いない?

 よーこさんがあがっていっていいって言ってくれたからてぶくろとマフラーを外す。

「あっつーい」

 お行儀よりもちょっと暑いー。

「昨日まで寒かったからって着込みすぎたー」

「あらまぁ」と笑うよーこさんに千秋兄が恐縮しつつ、「皆さんのちょっとつまむおやつにどうぞ」と大量生産クッキーを渡していた。

 睨まれても知らないもーん。

 熱は平熱だもーん。

 俺の目的は雪姫ねぇちゃんだもーん。

 ふわりとワンピースが見えた。ターゲット発見!

 白い髪をさらりとおろしてパチリと赤い瞳を瞬かせる。人違いはない!

「雪姫ねぇちゃん! 一日早いけど、ハッピーバレンタイン♪ 当日はやっぱ恋人同士の日かなって。邪魔しちゃダメだよねって思ってさ。でも、大好きは届けたいから今日持ってきたのー」

 少し、小さな子供みたいな演出で抱き付いて白の包み、ピンクのリボンでラッピングされたプレゼントを押し付ける。ついでにほっぺちゅー♪

 少し驚いてる雪姫ねぇちゃんの赤い目がきれい。

 なんか嬉しくてふわふわする。

 するりと千秋兄の手で引き離される。

「すみません。雪姫さん、驚かせて」

 小さくお前もかとか聞こえたけどよくわからない。

「熱ある?」

 すいって額を抑えられる。

 ねぇよ。

 千秋兄が首を傾げる。


「雪姫ねぇちゃんに会えて気ぃ抜けちゃったぁ♪ でも平熱〜」


「無理しちゃダメですよ」

 優しい雪姫ねぇちゃんの声。うー。

「大好き」

 ばふりと座ってる膝に抱きつく。ちょっと『大好き』を伝えて、てぶくろから抜け駆けで甘えてるだけ。

「すみません。隆維」

 千秋兄の気持ち苛立った声。

 ヤキモチ?

 雪姫ねぇちゃんは少し、驚いただけで笑ってるのに。

「葉子さん、三人で作ったクッキーなんだ。逆チョコね」

 遠くで涼維の報告する声が聞こえる。

 そんな声を聞きながら千秋兄となんとなく雪姫ねぇちゃんの取り合いぽくなりつつ雪姫ねぇちゃんを困らせる。

 楽しい。

「俺がメインで作ったのー。提案も俺〜」

 手を出しあぐねている千秋兄に笑う。

「ラッピングは千秋兄だけどね」

 すいっと距離を取る千秋兄はどこか照れてるみたい。

 雪姫ねぇちゃんはじっと包みを見てにこりと笑ってくれる。

「ありがとうございます」

「千秋兄、雪姫ねぇちゃんには賀川のにーちゃんがいるから意識(ホレ)しても無駄だよ?」


 忠告しとく。

 すると静かに千秋兄の手が髪をかき混ぜ、……

「痛い痛い痛い」

 力を入れてグリグリされた。

 赤くなりつつ、おろおろする雪姫ねぇちゃん。

 飲み物を出してくれたよーこさんが楽しそうに見守っている。

 涼維はツーンと視線を外す。


 見捨てられた!!



 その後は雑談したり賀川のにーちゃん宛の包みを雪姫ねぇちゃんに預け、(在宅確認? しない)遅くなる前に帰ることにする。

「こういうイベント時じゃないとまだ体調のせいで会いに来にくいんだー」

 帰り際、名残りを惜しむ。

 撫でてくれる手が優しい。

「えい! マーキングだぁ♪」

 ひとしきりスリスリ。


 堪能した。

「またね。雪姫ねぇちゃん」

「はい」

 やわらかな返事。

 他に挨拶を済ませていたらしい千秋兄と涼維の呆れ気味の表情はスルー。

「よーこさんもまったねー」

 ぶんぶんと手を振って駅へ向かう。

「お前が一番、恋敵的認識されるんじゃないのか?」

 駅へと向かい、歩いていると千秋兄がそんなことを言う。

「えー。俺はすっごく応援してるよー」

 雪姫ねぇちゃんが好きな人といるのがいいんだよー。


裾野の前田さんの家。

葉子さん、雪姫ちゃんを『うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話』からお借りしました。


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