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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
398/823

2/13 バレンタイン前日①

「抜け駆け禁止ー。一人で行くのなしなー」

「熱出したらおじさんか、ゴドじい呼び出して車で帰すから」

「く。大丈夫だよ。今日はちょーしいいんだからな!」

「涼維。密告は悪じゃないからね」

 どうも微熱気味に見える隆維。(体温は計らせないし、距離をとって触られないようにしているのがあやしい)

 しっかりと涼維が頷くのを確認。ミラちゃんたち小学生組を急かす。

「ほら、途中まで一緒に行くから食器流しに持って行って。ああ、バート兄、後片付けよろしく」

「んー。分かった」

「今日はべるべると遊ぶから遅くなるわ!」

 芹香が宣言する。いや、チョコ作りだろ?

 遊ぶだけなら昨日も遊んでたよね?

 知ってる。知ってる。

 それよりも、

「人に向けて勢い良く指を差し向けないの!」

「はぁーい。ところで鎮兄は?」

「お外からまだ戻ってないの? 直接学校?」

 芹香がその気なさげに返事し、みあのあが心配そうにキョロキョロ確認する。

「さぁね。ほら、行くよ。隆維はちゃんと防寒した?」

 マスクよーし。マフラーよーし。手袋よし。替えのマスクは? 涼維がさっとパックをかかげる。OK。

「した。ちょっと暑い」

「熱?」

 少しからかう。

「ちげーもん。行くぞ。涼維!」

 不貞腐れて涼維の手を引いて歩き出す。

「じゃ、バート兄、あとよろしくー。行ってきます」

 芹香達を小学生の群れに混ぜて、まぎれたのを確認してから歩き出す。

 涼維の視線が不安そうだった。

 そんなに鎮が気になるか。

 ぽつっと、

「マフラーあったし」

 ああ、もうよく見てるなぁ。溜め息がでる。

「38.2℃」

『えっ』

「内緒、な?」

 声はあげたが涼維はすぐに納得していた。

「昨日ぐずぐずしてたからだ。納得」

 ぐずぐずしてたんだ。

 まぁ、多分、明日には熱引いてるかな?

 万が一のインフルエンザ対策に隔離されてるけどね。

 インフルエンザにしてはそこまで熱上がってないし。

 朝様子見た時はすげーうっとおしかったけど。

「ま、もし風邪だったりすると人にうつしたら大顰蹙の時期だから、見舞いとかお前らも寄るなよ? あと、空ねぇが心配するのはイヤだから言うなってさ」

「う。空ねぇに内緒なんだね」

「隆維、わかってる?」

「もちろん! 見舞いも何も今日は雪姫ねぇちゃんのところに逆チョコもって行くんだからんな暇ねぇよ!」

 涼維が呆れた眼差しで隆維を眺めている。

 うん。渚ちゃんには言いそうだよな。

「あとー。明日の根回ししときたいところもあるしー」

「三年に迷惑かけないように」

「ちづならいい?」

「有坂妹には特に迷惑かけない」

 高校前で別れる。

 持ってやってた隆維の鞄を涼維に渡す。

 校舎に入る手前で柳本と合流する。

「おはー。千秋」

「おはよう菊花ちゃん」

「今日は雪もやんでそこそこ暖かくなったよねー。このままぬかるみがとれれば、こう、自転車シーズンなんだけどなー」

「いや、寒いよ」

「そこがいいんじゃん! ひやんとした空気の中、風をきって疾走する! サイコー」



 ……このスピード狂が。



「車と歩行者には気をつけろよ?」

「おう! あ。そういえば今日の部活はー?」

 眼差しと空気がチョコ♪ チョコ♪ と訴えている。

「今日は弟達と約束があるから無理」

「えーーーーーーーー。じゃあ、鎮。売らない?」

 ちょっと笑う。

「ごめん今日休み」

 だから売れない。

「え? またなんか問題起こした?」

 心配そうに顔を覗き込んでくる。

「違うよ。ちょっと雪遊びが過ぎて熱出しただけ」

 ぱっと離れてはんっと息を吐く。

 男らしいよ柳本。

「どこのお子様よ」

「ウチのお子様だよ」

 そんなことを喋りながら互いの教室で別れる。

 適当に挨拶をしつつ落ち着いてからメールを宗一郎君に送る。

 昼の用意は鎮がしてるから体調不良で休みなわけだし連絡入れてやらないとね。

 さすがにバレンタイン前日なだけあって話題はチョコレート。

 堂々とくれとすがる奴。あえてちょっと親切にしてアピールする奴。諦めて興味ないという顔をしつつ、女子をちらちらうかがう奴。試験勉強に没頭してる奴。

 そして男子の反応を確認する女子や、明日渡すチョコの相談をはしゃいでしているグループといった具合に盛り上がっている。

「日生君、今年も逆チョコ配るの?」

「ん。今年は配らないよ」

「えー残念」

 この時期は声をかけてくれる女子がそれなりにいる。

「でも、義理チョコ歓迎」

 それとない会話で時間が過ぎる。


 料理部の誰かに捕まったりする前に校舎を出る。

 待ち合わせは地下鉄中央公園駅。乗り換えは面倒なので地下鉄裾野まで行ってのんびり歩く予定。

 帰りは本線で。

 待っていた隆維と涼維、隆維のほうが少しむぅとしてる。

 本気で、熱あるんじゃないだろうな。

 じっと見てると小さく首を振る。

「クラスの奴とちょっと相性が悪いだけ」

 にゃぱっと笑って手を出してくる。

「雪姫ねぇちゃんに渡す奴持つー」

「はいはい。裾野に着いたらなー」


 黒猫クッキーに隆維の提案でわんこクッキー。

 犬系の抜き型はちまちま集めてたから種類はある。

 星やハートの定型クッキーは大量に。

 一匹だけ白い雪姫さんをイメージしたんだろうなと思える猫を作った隆維は凝り性だと思う。

「これは賀川のにーちゃんにあげんの。でも預ける相手は雪姫ねぇちゃーん」

 とにへりと笑う。

 悪趣味だと思う。

「雪姫ねぇちゃんにはてぶくろクッキーとわんこクッキー詰め合わせー♪」

 歌いつつ、てこてこ道を歩く。

 小分け包装してるし、ケーキとかではないけれど、

「隆維、食品を振り回さない。中身が壊れてたらイヤだろう?」

「はぁーい。こんにちはー。よーこさぁん、雪姫ねぇちゃんいますかー?」

 おまっ!

 もうちょっと挨拶を!

「お久しぶりです。その節はお手間をおかけしました」

青空空ちゃん渚ちゃん

を『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』からお借りしました


裾野の前田さんの家。

葉子さん、雪姫ちゃんを『うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話』からお名前のみでお借りしました。

続けてお借りすると思います

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