2/9 チョコレート
「これは、楽しみなバレンタインだな」
鎮先輩の言葉にげんなりくる。
さっきお迎えに来た三春おじさんはあえてキッチンに近づかなかった。
鈴音と天音がいる間は僕もキッチンに近づかなかった。
自室でゲームしてたし。
夕方、晩ご飯を作りに来てくれた先輩の言葉はその痕跡を見ての感想だ。
「本番は海さんの監督が付くらしいんですけど、ね」
一緒に作る話が芹香ちゃんにより決定されている。
「海ねぇも、思わぬ苦労かもなー。忠告メールでもしとくかー」
笑いながら荷物をおいて汚れ物を洗っていく。
「この辺の一回定位置に戻すかー」
「今日は、機嫌がいいですね」
「んー? ちょっと夢見がよかったんだー」
夢見?
「ちっこい千秋がぬいぐるみ齧りながら寝てるって夢ー。今じゃ、エロ本の上で寝てるっぽいけどさー」
どう思うって眼差しを向けられて困る。
「いや、まぁ年頃男子だし?」
先輩もそうでしょうに。
ちょっと居心地が悪い。
「そういっちゃんもそーゆーの興味持って見たりすんの?」
なんですか。その意外そうな口調は!
まるっきりないわけでもないが、小さな頃から自宅に帰ってリビング横を通れば、たまたま帰ってたじーさまがお持ち帰りとよろしくやってたりとか普通だったから軽い雑誌くらいは「ふぅん」って気分になるのは確かだけど。
じーさまがお持ち帰りするのは若くて美人で胸の豊かな女性が多かった。
雑誌もそういう女性が多めだよね?
じーさまは平気で「つまむ?」とか「混ざるか?」とか言ってくるからな。
流石に恥ずかしい。
「んー。ちょっと意外。興味ないのかと思ってた」
飛び散ったチョコのかけらを集めながら先輩がぼんやりと言う。
天音はくせはあるけどクッキー焼けたはずだから主犯は鈴音かぁ。
「先輩だって空さんとお付き合いしていたらふらっと先に進みたいって思うこともあるでしょう?」
控え目で可愛らしくて確実に自分に好意を持ってくれているし、実際、付き合ってもいるんだろうし。そんな相手ならタイミング一つで一歩進むことだってあると思う。
未成年のうちはやめておいた方がいいとは思うけど。経済面で困ることがないならいいんじゃないかなとも思ったりする。
というか、反応がないんだけどやばいポイント踏んじゃった?
話題ふってきたの先輩だよね?
どう話を振りなおそう?
「考えたことなかった。そばにおいてくれるのが可愛くていつも新しい発見があるからそれでいっぱいいっぱいで」
…………
ただの惚気かよ!!
青空海ちゃん
青空空ちゃん
を『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』から話題にお借りいたしました。




