2/6 食事の後帰り道
『大好き』と本意を装って告げられる言葉。
無条件に『愛情』の『形』を受け入れる様子が『見慣れたもの』で。
本意で無い。
それでいて本心からと自分でも考えている。
それが透ける。
「愛してるよ。シー」
「んー。こっちで慣れたせいか、あんま言われ慣れねーし照れくっせーよなぁ」
軽く額を掻いた後、にっと笑顔を向けてくれる。どこか照れたような笑顔。
「愛してるよ。ランバート」
「どう、したいんだい? シーが望むんなら叶えれることは全部叶えてあげるよ?」
その言葉が終わる前に、トンっと軽く距離を取られる。
冬の夜の装いは布が多くて表情が隠れる。
「要らねー」
拒絶が伸ばしかけた手を止めさせる。
「大好きだよ。愛してるよ。でもさ。なんで来たの? 俺はここが好き。昔なんか知らない。これからなんか知らない。庭も魔女も約束も」
「知らなくていい。興味を持たなくていい。守るから。シーとチアキは守るから。怖がらなくていいから。絶対に敵に回らないから」
先を言わせないように抱きしめる。
壊れそうな脆さが辛い。壊れてしまえばいい。そうも思う。きっと、壊れきった方がこの子は楽なんだと思う。楽であることは幸せかと問われれば難しい。でも苦痛はない。
冷静な部分では理解している。
シーは味方確認がしたいだけで、私をさほどは必要とはしていない。
シーにとって、『チアキを守らない(愛さない)私』は価値がないのだろう。
その価値がある限りは好意を示してくれる。
たとえ、それが形ばかりでも。
自覚はないのだ。
そう。振る舞うことはシーにとって過去の中の要素。
それでもどこか刻まれた対応。
シーに望まれたのは好意を示す事。
それこそどんな相手にでも。その良い部分だけを見て好意を示す事。
注がれる愛情は打算まみれ計算まみれ。
シーは望まれていることを正しく汲み取った。
私は見ているしかできない。
彼らは心を破壊する匠であり、私の力は及び難い。
それでも、シーとチアキは許可をもらって私のものになった。
私が気がついて嫌がれば返してもらえた。
シーは私を無意識に利用することを覚えた。
それを正しいことだと私は教えた。
あそこではなんであろうと存在・利用価値が必要なのだから。
「変わりたくない。今がいい。それなのに……」
「変わらなくていいんだ。今のままでいい。シーはそのまま好きに生きていい」
ちゃんと守るから。
「シーとチアキを愛してる。二人は私のものだよ。なにも、心配するようなことはないよ?」
囁きキスを落とす。
「約束だよ。ランバート」
「もちろん。シズメ。君の名に誓おう」
深い緑の瞳はとても、凪いでいる。
「大好き」
はにかむような笑顔と軽いハグ。
それだけでもう、どうでもよかった。




