2/4 下準備。
デートがてら空ねぇを送って、帰ってきた鎮はいつも通り。
荷物を置いて着替えてキッチンに。
リビングでは隆維涼維がミラみあのあの宿題をみている。
芹香はタブレット端末を操作しつつ、隆維たちと会話している。
あそこの跡継ぎ大丈夫かとか、交友関係の話のようだけど、話題がどこか遠い。
食材の扱いが少し大雑把な鎮。
それでも、扱いのコツをそれぞれ数回説明、見本を見せて、問題点を指摘。それだけのことであっさりと身につけて楽しそう。
「最低限より上にできた方がいいよ。空ねぇにアピールポイントにもなるんじゃない?」
不思議そうにしつつも、その提案にはのってくる。
今まで俺がやってたことを押し付ける。
鎮は「えー」とか言いつつも拒否はしない。
俺が数日かけてコツを覚えたことを「ぉお」っとあっさりと納得してモノにする。
わかっていても気分は良くない。
見ていると動きが止まる。
「自分で作りたいんじゃないのか?」
「今さ、そういう気分になれないの。できた方がいいって思ったんでしょ。ほら、手を動かして」
面倒臭いなんて悪態をつくのはあくまでポーズ。
たいした手間とも認識せず、工程を身につけていく。
それがどれほど劣等感を刺激するものなのかなんて教えてやらない。
表情はいつも通り。
鎮はメンタルストレスに弱いところはある。
それとなくそれを緩和していた要素が減った状況が今なんだろうと思う。
そんな中、変化が多かった。
良い変化でも、それはストレス。
俺の件もストレスだったろうし、隆維の件もあった。バート兄のことだってストレス。空ねぇとのおつきあいは現在進行形のストレス。
どう転ぶかわからないのは不安だよな。
よく思い返せば、夏辺りに信頼できる頼ってもいい大人を減らしたのが大きいのかなと思う。
現状鎮はおじさんを頼っていい相手から外している。
普通に振る舞いつつも小梅先生も『頼っていい』相手から外している。
まぁ、もう卒業してるし、先生もお母さんになるんだし、当然だよね。
そうすると、鎮的に頼ってもいい大人がいないという状況が出来る。
そして、弟や妹に頼ることはない。母さん? 問題外だよね。
たとえ、『頼っている』と言われても、『嘘つきだな』で切って反論されない自信がある。
のぶ兄だって忙しい。宇美ねぇのことや、結局迷惑をかけてた俺とかで、そこに自分をねじ込める根性は鎮にはない。
で、バート兄のことは頼る相手としては見てないのを知っている。
「鎮ってさ」
「ぁあん?」
「バカだよね」
「おい。なんだよそれ?」
「本当だろ? そこでひっくり返して」
ひっくり返す時に欠けた部分に不満そうだ。
「慣れだよ。慣れ。作業は慣れてもさ、不安は本質的に慣れれないと思うよ」
これはフォローの下準備。
本当に面倒臭いよね
これで下準備なんだから。
ちらりと小梅先生お名前借りました。




