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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
378/823

2/3 お買い物

 校門付近でぽけりと待機。

「意外とルーズ?」

 少しむぅとする。

 正論とはいえ、隆維を泣かせたんだから気に入らない。

 いつの間にか隆維は気に入った扱いをしてるけどそれも面白くない。

 そして、隆維のクラスの美丘さんも気に入らない。

 横ではぁっと息を吐く音が聞こえた。

「マスク、息こもって苦しい」

 ……。

 じっと見る。マスクとか嫌いだよね?

「我慢する」

 感情につられて熱を出すってパターンが多いけど、免疫抵抗力も弱ってる状況らしく、インフルエンザとか、ウィルス系はこわいとは思う。

 本気で周囲ではやったら休みかなとは思う。

 呟いて手をこする。多分、冷えるんだろうな。


 ぎゅうと寄り添う。

「おー?」

 驚いたような声。

「近い方が寒くないよねー」

「ぉおー」


 ご機嫌でもたれてくる隆維が可愛い。


「少し、まわりの視線は気にした方がいいと思うの」

 天音ちゃんの声に周囲を見回せば、遠巻きな生徒。

 なんで?

 ゆるりと視線が外される。

「これだから男の子は……」


 な、なんかひどくない?!


「隆維、りょおい。お待たせ」

 なんか俺の呼び名が微妙。

「おっせー。待ったされたー」

「ミアとノアの本読み聞いてたんだよ」

 あ。今日もやってたんだ。

「さっすがまま♪」

「妙な呼び方するんじゃない。あと買う場所は遠いのか? 今日は授業があるから準備もあるんだ」

 なぜ今日買いに行くことにしたんだ。ランバートさん!

「遅いからじゃん。昼休みから立って待ってりゃいいのに」

「ふざけるな風邪をひくし、そんなのは不審者じゃないか」

 二人の会話のテンポはいい。

 あれ?

 不審者じゃなくて寒くなかったらそこから待つことに不満はないんだ?

 とりあえず、色彩だけ見たら仲良し兄弟だよね。親子には近いし年齢。

「涼維。悪魔んとこ行くぞー。早くー。時間なくなるとコロッケ買ってもらえねーじゃん」

 え!?

 コロッケがお駄賃なの?

 鶏手羽とかじゃダメかなぁ?

「リクエストあれば言えばいいよ。そのくらい構わないから」

 頷いて商店街に向けて歩き出す。

「んで、落ちゲーでいいんだ?」

「昨日やった奴な」

「落ちゲーは一個覚えたら他のも大概できるぜ? 似たよーなもんだしぃ」

 あーそうだよね。俺も落ちゲーとかパズル系は好き。

 戦略シュミレーションとかは苦手。RPGはネタバレ気にする千秋兄が始めて後は適当。芹香はこないだまで経営ゲームにはまってたし、鎮兄がはまってたのはみんなでやるすごろく系ゲーム。得意なのは縦シューティング。ちなみに隆維がマジに好きなのは箱庭系。時々、「この神の采配を見よ」とか呟きながらやっている。たぶん無意識。

 自然な動きで隆維にマフラーが増える。

 鎮兄の動きと同じだと思う。

 好きじゃないから近いところなんか見たくない。

 つい甘えちゃうから拒否してみた。

 そんなかわいいことをあの千秋兄がするわけないんだ。

 今朝の千秋兄はどこか浮ついた空気があってちらちらランバートさんを意識していた。

 流石に隆維も不思議そうに見ていた。




 こつん


 そんな音が聞こえて音のほうを見ると鎮兄がその光景を見てた。

 ただ、それだけだったのに。すごく目が離せなかった。

 目が合うと笑われた。

 『どうかしたのか?』と聞いてるような笑い。

 今朝は、それが、……うん。こわかったんだ。

 ずしりっとおなかが重くなるようなそんな感じ。


 ・

 ・

 ・

 ・


 まわりに挨拶しながら『ホビー高原』を目指す。

 商店街のそば、そこには夏の終わりごろにできた古本屋さん。

 奥の方を漁れば? 面白い希少本もあって鎮兄の図書館に継ぐ天国らしい。

 商店街を顔見知りに会えば挨拶しつつ歩く。

 ランバートさんもどこか慣れた風に歩いている。

「商店街、よく来るの?」

「ん? 三回目、くらいかな? はぐれたら迷える自信がある!」

 自信を持って迷わないで。

 すぐにくすりと笑って、

「迷ったら、お店の人に聞くよ。大丈夫」

 その言い方が兄さん達と同じで。受け入れたくないのに安心しそうになる。

「すみにー! お客連れてきたよー! みちこせんせーとどこまでいってんのー?」

 うん。

 ランバートさんに意識取られすぎたって反省してる。

 いつもなら「みちこせんせ」あたりで口を塞ぐから。うん。今日は止めそびれた。

 にやり笑うすみにーはきっとバレンタイン期待の真っ只中なんだと思う。

「みちこせんせいって、高校の倫子先生?」

「うん。そー」

「うん。きりっとしたクールな先生だね。その彼氏なの?」

「うん。そー。だから手ぇだしちゃダメなんだぜ?」

 隆維、その言い方じゃどっちが対象かわかりにくいよ。

「心配しなくても対象年齢外だね。でもねぇ、そのくらいの試練で壊れる程度なら愛とは言えないと思わないかい?」

 ランバートさんもかっ!?


「すみにー、携帯ゲーム買いに来たんだー。パズル系はどっちの機種でも出てるから画面、おっきい方がいいし、新色とか出てたよねー?」

「クリスマス正月商戦で結構種類はあるよ」

「売れ残ってんの?」

 隆維、失礼だから!

「売れる見込みはある。もうすぐ春休みだしな」

 入学卒業でお祝いに買ってもらうっていうのもあるかー。

「バート兄、好きな色はー?」

「んー。赤か緑」

「あーぃ。兄ちゃん達の髪の色と目の色か。ブラコンめ!」

「ふーふーふ。あの双子はかわいーからね」

 他のお客さんもいるのにそのノリはやめようよぅ。

「すみにー。悪ノリしてる二人でごめんね」

「いいって。あっちの人が買うの?」

「うん。昨日、落ちゲーにハマったらしくって」

「昨日で今日なんだ」

「うん。隆維にぼろ負けしたんだって」

「あれ?」

「うん。隆維より俺のほうが強いよ? 俺とはまだやってない」

 落ちゲーは得意。



 結局買ったのは赤いゲーム機。メモリカードは最大容量。落ちゲー二本、本体カバーとイヤホン、画面シート。備品一式と、課金用のカード。それと、月末発売のゲームを二本、買ってもらった。

「帰ってくる頃にはメアドや、パスの設定だけすればいい状況にして待ってるぜ!」

「え!? すぐ遊べないの?」

「うん。アップデートとかあるもん。ゲーム系、うとい?」

「あんまりそういうのは使って遊ばないなぁ」

「ゲームの説明書。見る?」

「いや、帰ってプレイするのを楽しみにしているよ」

 ふわりと浮かべる笑顔はあまりつつかれたくないことのある時の鎮兄の表情を思い浮かばせる。

 高校前で分かれて俺達は家に帰る。

「初期設定ー♪ 初期設定♪ メアド貰ったー。パスは任せるって言質は取ったー。課金用カードはあるー♪」

 隆維が浮かれてる。

 こういう設定、自分でしたがるタイプかと思ってた。

 鎮兄も千秋兄も芹香も設定は自分でしたがるから。

 一番、設定をいじるの好きなのはココで歌ってる隆維だけど。




高原直澄さんチラ借りしております。

話題で古本屋出しました。

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