1/22 夜の教室風景2
依頼された条件を満たした仕様へと細かい改造を施して行く。
ROMに組み込むべきプログラム。配線の流れ。使用するトランスのサイズ。抵抗は小型。この配置だと接触危険度が高いから炭チューブで覆う。
こことここを連結して、検査後これは切断。
使用場所が防爆エリアか。
密閉処理に使用する溶剤はBー7溶剤でいいか。真空処理要。連続通電検査及び動作確認・調整用専用プログラムの調整。
「え! まだいたのかい!?」
急に声をかけられて驚く。
「沢嶋先輩」
「……授業が優先だよ? 四月からはある程度の自主性を重んじるけれどね、試運転期間とはいえ、単位はつくし、教科出席日数は稼いでおくべきだよ?」
「……すみません」
「前の職場では根を詰め過ぎて入院だったんだから自己管理はしないとダメだよ?」
「申し訳ありませんでした」
「いや、謝って欲しいわけじゃないんだよ。まだ半リハビリのつもりでのんびりやって欲しいんだよ。もうじき、言ってられなくなるしね。ま、いいから学校行っておいで」
「あの、」
「うん?」
「プログラム流しておいて授業終わり次第戻ってくるというのは?」
「……明日にしなさい」
「…………失礼します」
「はい。お疲れ様ー」
職場の制服をロッカーにかけ、学校のブレザーに袖を通す。
その上にコートを着て、退社する。
あと少しなんだがと思う。
調整用プログラムのルーチン調整だ。
止まられると製品を作り直しになって納期に響く。
まだ試作品とはいえ気に食わない。
当然ながら給料査定に響くだろう。
入院は金を食うだけだから遠慮したい。
外の空気は冷たい。
陽も落ちてるのでなおさらだ。
一時限目ももう半ば。まぁ遅刻くらいいいかとは思う。
少ないがまだちらほらと昼間の生徒たちが見える。
一月も終わりに近く、受験とかで減ってる状況かな?
昼間の事情は分からない。
今日は久々に弟からメールが来ていた。
妹が風邪を引いたという内容だった。
ただし、先月の話でもう治ってはいるらしい。
体調を崩した時に連絡するのに躊躇うぐらい気遣われているのを感じる。こちらも連絡しないが。
もう少し、足場をきっちりさせないといけないだろう。
「あら。おはよぅ。残業だったのぉ?」
吉川さんがのんびりと挨拶してくる。ハーフアップのゆるふわが絶妙だ。動きに乗ってローズ系の香りが届く。
「おはようございます」
挨拶だけ返して、着席する。次の授業にはまだ少し間がある。
少しでも進めたい。
飛鳥が「仕事を持ち込んで」と不満げだ。分けて考えたい彼奴には不愉快なんだろう。
あと、少しなんだ。
ここのパターンが組めれば、目処がつくはず。
そこから先の実物作成はお前の仕事になるさ。
「ここだ。ここのルーチンの組み方が……」
「あ! そうか。ここで組めば、そこから……」
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「つ、津田先生、ありがとうございました」
始業ベル聞こえてなかった……。
「いや」
津田先生は言葉少なくそばを離れると何事もなかったように授業を始めた。
津田仁さんお借りしてます




