2/2 ゲーム(バート側)
日本文化と言ってリューイにゲームに誘われた。
ルールは落下口が塞がらなければOKとシンプル。
勝敗は落下口まで埋まった方が負け。
いきなり始まるポップな曲。
『すたぁーと!!』
と周囲から音が響く。
「スピーカー。ゲーム音響とーさんが凝ってるから」
リューイは指先ひとつでくるくるとモニター上のものを回して落として行く。
自分の画面を見ればのたのたと真っ直ぐに落ちていく。
『といやー♪』
そうやって消していくゲームらしい。
「おんなじ色四つがくっつけば消えるよ」
画面を見ずにそう言ってくる。
教えてくれるのは助かるんだけど、見てないのにカラフルなイラストが同色組三つから二つ単位でくっついて積み上がって行く。
ちらりと画面を確認したリューイが頷いて、
「フィーリングだよ。フィーリング」
とか言ってくる。
さて、私にできるか?
一戦目は一組も消すことができぬまま、埋め尽くされた。
「やったね」
こ、子供相手にムキになるのも大人気ないよな?
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大人気なくて結構だ!
冷静な子供の前でモチロン、ムキになっていたとも!
ゲームをしながらの会話は思いの外深かった。
まぁ余計なことももらした気もするが練習用携帯ゲームを買いに行くのは付き合ってくれるらしい。
チアキとシーの恋愛事情に対して正直な想いを答えた後、こちらからも振ってみた。
「家族、特に弟に夢中で、自分の恋愛とは無縁そうだね」
と。
きょとんと色合いが深みを持つ瞳を見開いて思案しているのを見ておや。と思う。
スッと視線をモニターに合わせ信じられないような高速で積み上げて行く。
ハンデはいらないと言ったがあんまりだとも思う。
「彼女ぐらいいるよ」
「ほぅ」と相槌を打つ以前に私は絶叫していた。
画面はいくら重ねても彼らだけでは消えないジャマーに埋め尽くされていた。
そしてタイミングを逸した質問は非常にしづらいものである。
……私だって空気は読むのだ。
「明日、買いに行くぞ!」
「明日、月曜日ー」
「学校終わったらでいいだろう? 荷物は涼維に持たせればいいし」
「ひでぇ」
ヘラヘラと笑うが断ってはいない。
了承なのだろう。
「だから、体力はちゃんと温存しておくように。発熱で延期。とかは迷惑だ」
ああ。
「それとインフルエンザや風邪が流行中だから手洗いうがい、マスク着用はきちんとするように!」
「はーい」
「笑いながら返事をしない。本気じゃないように見える」
そう言っても隆維はくすくすと笑う。
「はーい♪ 外に向けては気をつけるよ。それでいいよね。バート兄」
うん。と返事をしかけて止まる。
「この件はともかく、真面目な状況でその態度は良くない。で、どうして笑う?」
ふわふわの髪が揺れる。
「うーんっとね、ありがと。お腹空いちゃったよ。おやつ食べに行こうよー。涼維たち試作中だしさー。チョコーチョコー♪」
わからない子供だと思う。
ただ、嫌いにはなれそうにない。
「あー。内緒だよ?」
振り返ってそう笑う。
あの子たちの弟だなぁと思う。
「ちゃんと買い物には付き合うように」
「はーい」
「あまり伸ばさない方がいいんじゃないのか?」
「はい」
からかえば合わせて真面目に振舞って笑いを誘う。
「内緒だな」
つい笑ってしまうと嬉しそうに笑う。
「うん!」
自分のブレーキが壊れていたと冷静に言える子供。
大丈夫だったはずの場所が最初から壊れていたと告げられることは笑うしかない。
それはとても悔しい。
「しずにー。ちあきにー。りょういー。おなかすいたー」
「遊んでたんじゃないのか!」
「へへー。あ、涼維ー明日学校帰り寄り道なー」
「えー?」
「買い物のお付き合いだってー」
「どこー?」
「悪魔んトコー」
!?
悪魔?
「あー。わかったー。なんか欲しいものでもあるの?」
「ん? 俺じゃなくってさ……」
はいはい。私のリクエストだよ。
ん?
なんだその何か企んでる笑顔は?
「バート・ままのリクエストー♪」
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「ままってなんだー!?」
瞬間白くなったよ!
隆維、机叩いて笑い転げてるんじゃない!
シーも軽く横向いてこらえない!
チアキ、何で机の下にしゃがみ込む?
下のほうから引っ張られる。
ミアとノアだ。
近づいてくるのは珍しい。
「まま、国語のほんよみ聞いてくれる?」
「のあも」
別にね、私だって無体なまねは別にしないんだよ。
小さな子の教科書の方が日本語が優しいし字が大きいしね。
わかりやすいし、日本語はまだ得意じゃない、からね。
後、数回、爆笑されることになる。
ちょっとむかつく。
ちらっと「ホビー高原」中学生コンビには悪魔んとこで通じる模様




