1/31 深夜
夢覚めて
ゆっくりとゆっくりと沈んでいく闇の中。
ほんのりと白が見える。
知らない女の人がベッドに寝ている。
背中を押されるからそのベッドのそばへ行く。
女の人がこっちを向いた気がしたからベッドによじ登る。
『坊や?』
覗き込むと女の人は知らない言葉を発する。
不思議な音に聞き覚えはないけど呼ばれた気がするから笑う。
声をかけてくれたのが嬉しくて。
そのまま震える手で僕を抱きしめ、キスを落とす。
『ご挨拶』を受けたから僕からもご挨拶。
僕はあなたを好きになれますか?
あなたは僕を好きになってくれる?
よくわからない言葉でたくさん喋ってくれて撫でたりキスをくれたりする。
たまに近づくなってする人もいるけど、僕を見るまなざしは優しい。
二度目に会う人は少なくて、一度で会えなくなる人が大半。
二度目会えるのは稀。すごく嬉しい。
三度目はめったにない。
ベッドに横たわる女の人。
四度目に出会った人はいない。
『そこの灯りを消してね』
僕はあなたが好きだよ。
さようなら。
あの言葉の後に会った人はいない。
その意味に気がついたのはいつだっただろう。
「ねぇ、シー」
頭を撫でてキスを贈ってくれるやさしい声。
「なぁに。まま」
優しい手。額にまぶたにと落とされるキスがくすぐったい。
「いい子ね。お願いをきいてね?」
「うん!」
ままのお願いをきけるのは嬉しい。
ねぇ。僕でできること?
「いい子ね。愛しているわ」
褒めてー♪
「そこの灯りを消してね。そして、…………お約束、ね」
嫌な夢。
セシリアママとの約束は思い出せない。
そっとチビどもを起こさないようにベッドから出て窓を見る。
冷たそうな塊が小さく窓を叩いて落ちていく。
「しずあにぃ?」
隆維の声に振り返る。
「わり。起こしたか?」
謝れば軽く首を振られる。
「冷えると寝にくいよぉ」
「ああ。すぐ戻るよ」
「体、あてるんなら涼維にねー」
「そんなに冷えてねーよ。ほら、場所空けろよ」
ここは暖かい場所。
あたたかなばしょ




