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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
362/823

1/12 日和ます

 うろな町に帰り着いてとりあえず、図書館に荷物を隼子ちゃん共々引き渡し、クリニックでお茶にして解散と言う話をしていた。

 クリニックで梨沙さんにお茶やコーヒーを入れてもらって一服。

 ついでに仔犬二匹のカルテを作る。

 赤のリボンオレンジのリングを通してある方がゼリー。正式にはアゼリア

 オレンジのリボン赤のリングを通している方がジェム。正式にはジェムフラウ

 ゼリーはなつっこく元気だが少し足を引きずる。

 ジェムは少し体調を崩しやすく、警戒心が少し高め。

 じいさんも久々のひ孫で機嫌がいい。

 となりのLOVE ふぁみりあや治療中の動物達を眺めて過してる姿は実に嬉しそうだ。


 シアちゃんの入った箱をテーブルに置いて、ゼリーとジェムを心配する千秋くんをからかうシズ君。

 それとなく賑やかだった。


 そんなところに

「尋歌。帰りますよ。おじいさまもお久しぶりです」

 鴫野明衣子(あね)の声が聞こえてきた。

 実家病院の医師を勤める姉はあまり、外へ出ない。出掛けるのは関連会議が主だ。

「お母さん」

 驚いたような尋歌の声が聞こえる。


 それが、どうしてこんなことになったのか。

 スカイフィッシュを膝に抱き、コーヒーを口にする。

「信弘君のお嫁さんには宇美おねえさんがいるから、お見合いとかいらないんだから!」

 力いっぱい言い放つ尋歌。

 気のせいか見物人が結構いて、頷いている姿が見えるような気がする。

 気のせい。だよな?

「落ち着きなさい。尋歌。はしたない」

「今時、家がどうこう言うのなんて古いんだから!」

 古いのは確かだがどうしても親族との関係もあり、同族経営の病院だから下手に揉めて患者さんに迷惑をかけるわけにもいかないだろうしな。

「信弘君。宇美さんという方とは実際どうなってるのかしら? ぜひ近いうちに正式に紹介しに来てくれるんでしょうね?」

 姉の矛先がこちらを向く。

 そこにいる宇美のことは見ようとしない。

 真っ直ぐこちらを見据えてくる姉。



 ーーー『私がいるし、鴫野先生と結婚するし、好きな道を進めばいいわ。大丈夫よ。信弘君』

 そう言って誰よりも応援してくれた姉。

 それが変わってきたのは、不妊治療を始めた頃。

 当時は知らなかったがかなりのプレッシャーが親族からもかけられてたらしい。

 だからと言って道を降りる気にはならなくて。どう言葉をかければいいかもわからなかった。

 そしてそのまま時間が過ぎた。


 ーーー


「信弘君?」

 返事を促してくる姉。その眼差しは「はっきりなさい」と言っている。

 周囲の視線が痛い。

「近いうちに実家に顔を出すよ」



 そのぐらいしか言葉がなかった。

 梨沙さんが小さく日和ったわねと言った呟きは聞こえなかった。



「帰りますよ。尋歌。おじいさまもたまには帰ってきて下さいね。それでは失礼いたします。信弘君。お約束、忘れないように」



多分、海ちゃん空ちゃんは眺めてる。

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