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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
358/823

1/11 うろな町の外

「……鎮君?」

 空ちゃんの声。少し本から意識が浮上する。

「あれ? いないの?」

 昼前にダンボールを幾つか積んでコテージに。今は大雑把に本の分類をしつつ、箱詰めしなおし中。

 そっとドアの影から伸びる手が見えた。

 ここでいきなり掴んだら驚くかなぁ?

 そう、ちょうどドアの横の壁にもたれて立ち読み中だったからできなくはないんだよね。

「ん。ココ」

 本を閉じて、壁から離れる。

 それでも驚かせたみたいだった。

 ついつい、誘惑にかられて部屋に引き込む。

「驚いた?」

 ドアは開けっ放し。

「もう」

「動物たちどうだった?」

 今日、空ねぇたちは動物保護センターのボランティアをしに来たノブ兄達のお供だったはずだから。

 ただ雨だから、屋内作業なんだろうけどさ。

「かわいかったよ?」

「そっかー」


 たわいない会話。引き込んだ時つかんだ手を何と無く離せない。

 甘えてるんだと思う。

 多分どこまでが許されるのか試している。確認しようとしてる俺がいる。

 だから、言葉が続かなくなる。


 大切なものを守ることなんかできない。

 いつだって危険に晒し困らせるだけ。

 笑顔でいてほしいなら、離れた方がいい。

「空が好きだよ」

 きっと、唐突な言葉。

 顔に朱をのぼらせる様がかわいい。

 その瞳を見てられなくて、肩に顔をうずめる。

 雨の匂い。そして獣臭。シャンプーの香り。


「車の中でさ。隼子ちゃん根掘り葉掘り桐子さん情報聞いてくんだぜ。プライバシーじゃんか。なぁ」


 空ちゃんのことを知りたいかなと思いつつ、出るのはそれた話題。

 そんなことが言いたいわけじゃない。


 ぬいぐるみを抱きしめて見上げてくる表情が可愛いとか。

 大丈夫と抱きしめてくれた後で自分の行動に赤くなったり。

 ふんわりした服を着こなす姿。

 和装だって似合うし、穏やかで優しい動きはしっくりくる。

 そして、いろんな人たちを魅了する歌声。

 家族を大切にしてる。

 そのくらいしかわかってない。


 たくさん空のことを知りたいのに聞けない。

 知ることは知られることで。

 それがこわいと思う。

 だからつい、どこまで許してくれるのかと甘えてしまってる。

 一緒にいて、俺のせいで笑顔が曇ったりしたら嫌だ。

「……空ちゃん、俺が甘え過ぎてたら教えて。俺たぶんよくわかんねぇから」

 そしたらそこでちゃんと線引きできると思うから。

 そう考えて、自分のズルさが嫌になる。

 空の全部、知りたいけど、自分は都合のいいところしか知って欲しくないんだ。


 ぽふりと柔らかな感触。


 その手の感触が心地良い。


「お二人さーん。ひ・る・め・し☆」



 !?


 俺と空ちゃんが同時にびくりとしたと思う。

「冷める前に食いにこいよー」

 絶対にニヤついてるとわかる声に顔があげられない。

 足音が遠ざかってから二人で「はぁ」と息を吐く。

 多分お互いに顔は赤い。

 ひとつふたつ深呼吸。

 覚悟はできた!

 からかわれネタを提供した自覚はOK。

 そっと耳たぶにキスをする。

「空にさ、ついキスしたくなるんだ」

 空ちゃんは可愛くて愛おしい。

「ダメなら教えて」

 そっと体を離して、空ちゃんを見上げる。

 言葉を封じながら、教えてと言う狡さ。

 ちゃんと立って空ちゃんの手を引く。

「昼飯〜。肉体労働だったから腹減ったー」




青空海ちゃん空ちゃんお借りしました。

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