1/16 マジ?
「りゅうい。いいかな?」
「バート兄ちゃん?」
「いくよ。『僕は、体調を崩して学校を休みましたが、真面目に治療に専念したとは言えませんでした。ごめんなさい。今後、このようなことがないように行動を改めるつもりです。日生隆維』……記憶力には自信があるだろう? 大丈夫、だよね? なら、このノートをその宣誓文で埋めてね。ちゃんとマス目のあるノートだよ?」
「回数じゃなくて、一冊?」
「うん。一冊。それと時間があるからね」
「じ、時間があるから?」
「書きながら聞いてね。あ、字は丁寧にね。ダメな割合に合わせてノートは増えるよ?」
「マジ?」
「もちろん」
差し出されたノートとシャーペン。
俺は頷いて受け取り、指示された文面を書きはじめる。
横にそっと置かれる替え芯と消しゴム。
書きはじめる横で時間を確認し、携帯を弄りはじめるバート兄ちゃん。と、思っていると口を開く。
「他の人に心配されたいのかな? そういう形でのかまって演出? でも、それはあまりよろしくないよ」
意外な説教だった!!
「手が止まってる。書きながら聞いてね」
あんまりの意外性に手が止まってた。
文脈を見直して、どこまで書いたか確認して再開する。
「ココ、一行あけていい?」
バート兄ちゃんがノートを覗き込んでから頷く。
「それで、りゅういは何がしたいの? 薄着でふらっと潮風を浴びるとか、熱を出して学校を休んだ子のすることじゃないからね? そんな日は食事とか生理現象以外は布団をかぶって動くべきじゃないんだよ? するべきノルマは体を治し、体調を整え、周りにあまり心配をかけないこと。寒い時期はインフルエンザとかも流行っているんだからね」
ノートを書き上げるまで説教は続いた。
意外と疲れた。
聞き流しモードに移行するとすぐに聞いてないと分かるらしく、注意を向けざるを得ない説明に移行する。
目で見て、自分の手で書いて、ひたすら穏やかな口調で語られるものを聞く。
洗脳かよ。とツッコミたくなる。
「あ、日本語ってまだあんまりわからないからね」
バート兄ちゃんが嘘っぽいことを言う。
「出来栄え判定は、ワタルに頼んでいるんだ。さっきメールしたら快諾してくれたよ。いい人だねー」
ワタル?
「疲れただろう? 明日は学校に行けるようにもう休むといい」
……
んー?
ワタル?
「夕食には起こしてもらえるよ」
出て行くバート兄ちゃんを見送る。
えっとー。
……ぇ?
マジか?!
アレの判定すんのマゾ清水?!
いやだー。
流石にちょっと嫌だーー。
「ただいまー隆維、体調大丈夫?」
「涼維。ひどいんだよー」
「え? ぁあ。泣かないで隆維」
清水先生お借りしました。




