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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
356/823

1/11 雨の中で

「信弘君が早く結婚してくれればいいのに」

 いっそ、獣医じゃなくて人間のお医者になってくれていればいいのに。

 そうしたら、私が病院を継ぐ必要性がないのに。


 信弘君がいないから選べない。


 お母さんは忙しい。

『大きくなったらお医者様か病院経営者ね。別に主婦でも構わないわ。素敵なお医者の旦那様を見つけないとね』

 お母さんとおばあちゃんはあまり仲が良くない。

 お母さんが私しか産めなかったから。

 時々、帰ってくる信弘君にお見合いをさせるのがおばあちゃんとお母さんの生きがいのよう。

 信弘君はそうなると私を連れて公園や動物園に連れて行ってくれる。あとでお母さんたちは『また逃げて』と怒る。それを信弘君は困ったように笑う。

 おばあちゃんとお母さんが信弘君のコトで色々言ってるのは好きじゃないけど、信弘君と過ごすタマの時間は好きだった。

 一月のお休みにここの連れて来てもらうのも信弘君と会いたいから。


 それはいっぱい動物たちのお世話をしてお昼をコテージでって戻りつつ空お姉さんと喋る時間。

 しとしとと冷たい雨が降る中、傘を差して歩く。

「え、あのおねーさん、信弘君のこと好きなの?」

 びっくりした。

 私より確かに年上だけど、それでも信弘君はあのおねーさんにとっておじさんだと思うのに。

 変わった趣味だ。

「おんなじお仕事だから同僚としての好きじゃなく、恋人としての好き?」

 信じられない。

「おじさんなのにどこがいいんだろ?」

 だっておじさんってだけで恋愛の対象じゃないと思うんだけどな?

 っていうか、信弘君恋愛本能あるの?

 そう言うと空お姉さんがほわっとした感じの笑顔を見せてくれる。

 夜の酔っ払い騒ぎの後、目が覚めてしまった私にお兄さんが気分転換に。ってお話をしてくれた。

 途中でもう一人のお兄さんが殴って止めてくれたけど、怖い夢を見そうで、ちょっとおどおどしてる私に「一緒に寝ようか」って誘ってくれた。

 別にお医者を目指してるんだから血の出る話がダメなわけじゃない。

 ただ、『ゆっくりと噛み砕かれていく中、溢れてゆく血はとめどなく池を作り〜中略〜ぐずりと音を立てて生温い赤い池に踏み込んださ……』ここでお話は途切れた。

 先が気になるのか、聞くのが怖いのかよくわからなかった。

 ただ、止めてもらえてよかったと思う。

 ちょっと、ううん。かなり怖かったから。

 そしてお酒の入ってるおねーさんたちは苦手だった。

 だって、びっくりだったから。

 おっきくなって飲めるようになっても少しにしようと思った。


「ずっと好きみたいだよ」

 赤毛のお兄さんが仔犬を二匹抱えながら教えてくれる。

 こっちはもう一人のお兄さんを殴って止めた方。

 もう一人のお兄さんは昨日酔っ払って暴れたおねーさんとお出かけだ。

 朝ごはん前に本を読みながらふらっと移動していて『自宅じゃないんだからぶつけるよ』と忠告されてた。


 ずっと好き。

 おじさんなのに。

 変わってる。

 恋愛って自由かもしれないけど、不思議。

「尋歌ちゃんは好きになる人はどんな人だといい?」

「年齢差はプラマイ七歳かなぁー。離れすぎてるのって困りそうー」

 仔犬をあやしながらお兄さんが笑う。

「ノブ兄とおんなじこと言うねー」






空ちゃんお借りしております。

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