6/24 暴走者は唐突に
実は早朝。
ぐったりとベッドに寝そべる。
起きたくない。
暑い。部屋にはエアコンがない。あるのは扇風機だけ。
暑い。だるい。デスロードからの疲れが取れない。
何しろ翌日も徒歩でうろな裾野まで歩き、自転車の回収。
25日までの約束で海の家の大掃除。および雑用という名の重労働。
自由に遊びに行く芹香を何度恨めしい目で見送ったか。
そしてもうひとつ。
母さんによる、チャンバラ指南。
剣道ではない。変則チャンバラだ。
そして母さん、むさくさ強かった。詐欺だろうってくらい強かった。
「ルール無しならかなりイイセンいくんじゃね?」が鎮評価だった。
ただ、ルール無し前提らしい。
「芝居の殺陣用の動きだからねーちょっと特殊?」おじさんがにこにこ笑いながら教えてくれた。
その結果、超疲れが抜けない。
助けて。
寝かして。
このままおきたくない。
暑い。
「えい。」
掛け声と共に背中に重みがかかる。
身体がきしみ重圧と熱量が増える。
「えい!」
追加。
あつい。
「ていやー。朝だぞー」
足の裏がくすぐられる。
「ちょ、ちょっと待て。起きた。起きたから、やめてくれ〜」
「最初っから素直に起きればいいのよ」
吐き捨てるように言う妹の将来が少なからず心配だ。
「おはよー。ちあきおにいちゃん」
「え! しずめおにいちゃんだよ?」
「ちあきおにいちゃんだよ。ミアはノアをあんまりからかわないの」
「はーい」
えへへと笑うミア。
「みあおねーちゃんひどいー」
「起きるから三人ともどいてくれないかな?」
「「「いやーーー」」」
「ちょ。お姫様方。リクエストはなんだー」
「アスパラのミルクスープ!」
「ポテトスフレ!」
「流しそうめんとアジフライ」
「そうめんは作れるけど流しは無理ねーノアちゃん、ミアちゃん、ポテトスフレは時間かかるから待てるかなー?」
背中でゆれる気配を感じる。
「それじゃあ開放しろーー」
「さっさと作るがいいわっ」
人を指差しちゃダメだよ芹香。
「あんまり我侭してるとべるべるちゃんに嫌われるぞー」
「大丈夫よ。腹黒さと間抜けさ加減では負けてるから」
それ大丈夫なのか?
「おじさんは?」
「基本の軽食作って、製造所に篭った。なんかインスピレーションがきたんだって」
「おじーちゃん達はグランパがお相手してるー」
「チビッ子組はおじーちゃんたちが見てくれてるー」
いや、ノアよりチビッ子なお客って少ないよな?
「近いうちにあの双子を誘うつもりよ! ミアとノアがお姉さんになる機会!」
「おーー。」
「きゃーー」
チビどもがはしゃいでいる。
着替えて、キッチンの冷蔵庫を確認する。
ん~
海の家の業務用厨房に移動することにした。
「おはよう。千秋ちゃん」
「おはようございます。そうめんとアジフライ作りますけど、追加リクエストありますか?」
常連の爺さんがおっとり笑う。
「シジミの味噌汁かねぇ」
「材料があればトライしますねー」
業務用厨房にはエアコンが効いている。
だが。
暑い。
揚げ物に煮物は暑いんだ。
「千秋も剣道大会出る?」
「出るわけないじゃん。って言うか、いきなりだね。母さん」
「うん。申し込みに行って来るから楽しみにしてるのよ」
「待って。母さん、出ないって言うこの意見は?」
「楽しみね。おかーさんも出るから。たのしみねー」
は?
「ちょ、出るんならちゃんとルールは理解してからだよ! ねぇ!」
「ちあきおにーちゃん、おなべぶくぶくー」
「え。ちょっ」
もーわけわかんねーー
人間どもに不幸を!から 剣道大会の存在
お借りしてます




