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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
349/823

1/10 彼女

 泊まる場所はノブ兄の親戚の所有するコテージ。

「時雨あたりが面倒見良くて良いんだが」そんなふうに連れてきそびれたことを悔いる。

 いや、別にそんなのはいいし。

 学校帰りそのままの格好。鎮の方は一旦、帰宅している。ついでに俺の荷物も持って帰ってもらってある。

「取材って、どんな感じだったんだ? 記者さんってどんな人?」

 やたら聞いてくる鎮を軽く無視して目的地への思いを馳せる。


 ああ。


 早く、着かないかなぁ。







 到着してすぐ、鎮は隼子さんに攫われた。

 元気いっぱいに「まずは挨拶よー」ともう一台の車に鎮を詰め込む姿は手慣れている。




 雨もあるのでもてる荷物を持って急いで屋根の下まで走る。

 車の音に気が付いてたのか、隼子さんの動きのせいか、宇美ねぇが早く来いと手招きしてくれる。



「彼女は奥の部屋ねー」



 くすくす笑って告げられて、そこまで自分が露骨だったかと思うと恥ずかしい。






 奥の部屋に彼女達はいた。



 ポンっと置かれた閉じられた箱を興味深げにしつつ、好奇心に視線をキョロキョロさせている。

 どうやら好奇心が強く動かされるのは箱と巨大猫。

 それでもどこか巨大猫は怖いのか遠巻きぎみで。

 彼女のつぶらな瞳に俺がうつる。

 不思議そうにこちらを見る姿が可愛すぎて困る。 


 ふこり。手に触れる柔らかく暖かな温もり。


 そばに寄ってきて見上げてくる彼女を愛おしく思いながら、閉じられた箱に手を掛ける。



 彼女もじっと見つめている。




「ぃっ」




 背後でそんな声が聞こえた。


 箱から起き上がるのはシアちゃんだ。

 ぐるりと周囲を見回す。



 そして、興味なさそうに彼女は身体を沈めた。

 その動きに興味を持ったのか彼女がシアちゃんの箱を覗き込む。


 特にシアちゃんが危害を加えようともせず、その様子を眺めている。





 少し、ホッとする。




「大丈夫なんじゃないかしら?」


 宇美ねぇのそんな声が聞こえた。

 正直いたのを忘れていた。


「やだ。そんなに驚かなくても」

 楽しそうに笑われる。

「シアちゃんはサマンサちゃんより大人しいからいけると思ったのよねー。というかサマンサちゃんが激し過ぎだったんだと思うわ」



 きゅっと彼女を抱きしめる。



「よかったわね。でも、これから予防接種とかあるからちゃーんと面倒みてあげるのよ?」


 腕の中にいるのは赤みがかった毛並みの仔犬。

 おじさんはシアちゃんとうまくやれるんなら飼ってもいいと言った。

 サマンサちゃんの時にもそうは言われてたんだけどね。

 鼻を鳴らす声が聞こえる。

 もう一匹が膝に来る。

 さっきまでどこにいたんだろうと顔を上げると、空ねぇがいた。

 あと知らない女の子。


 くらり。と羞恥のあまりめまいがした。

青空空ちゃんお借りしました。



「み、見られてた……」

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