1/2 苦味
「はい、こっちねー」
ぽかんとしてるテスを引いて脇道に入る。
じっと見上げてくるから笑う。
「デートさせたかったんだろう?」
こくんと頷く。
「なら問題ないだろう? お詣りの作法も教えてもらえたしね。あとはカワイイ妹とデートといこうと思ったんだよ?」
カワイイよね。お着物って。
「どうして?」
不思議そうな眼差しに困る。
何がどうしてなんだろう?
もしかして
「邪魔すると思ったのかな?」
小さく頷く妹。
流石に苦笑がもれる。
「だって、今は一緒にいたいかどうか迷ってるみたいだからね。そんなのは一緒に過ごせばはっきりするのも早いよ。一緒にいるのがいいなら問題ないし、離れた方が楽ならそれも問題ないよ。どっちを選んでも選ぶ動機次第で良し悪しが決まるんだよ? シーがどう選ぶのかを見れれば、おにーちゃんはたのしーんだよ」
そう言って、フゥと空を仰ぐ。
「で、ここはどこだろうか?」
「信じられない! 迷ったんなら迷ったって言いなさいよね!」
しらないの? と視線をおくれば、
「あんまりこっちにはこないのよ。いきなり知らない道になんか入らないし」
と言いつつ、キョロキョロする。
うろな町の西の方。
初詣する神社は西の方に固まっていてぶらりといくのは電車が便利だった。
うろな本線にのって五つ目の駅。
「なかなか楽しかったね。テス!」
「何でそんなに機嫌がいいのよ! 出かけたのは朝なのよ!」
途中で着崩れかけたのを根性で修正したり、通りすがりで見かねたご婦人に直してもらったりしてギリギリ見られる状況での帰宅だ。
おにーちゃんはお着物の着付けなんかできないよ?
「おかえりー」
「おかえりー。遅かったねー。鎮兄たちはー?」
ひょっこり顔を出した双子が『おかえり』を言ってくれる。
「別行動よ!!」
「ただいま。隆維。涼維。こんど一緒におまいり行こうね」
「気が向いたらね。オレンジリキュールのクッキーあるよ?」
「ああ、おなかはすいたよ」
「おじさーん。お着物脱がしてーー」
テスがアーサーのもとに駆けていく。
実際に帰り着いたのは六時を回っていてテスには辛かったかなと思わなくもない。
でもお互いにあっちだと思うと言う道を交互に行くと見事に迷ったね。
じっと見てくる双子の片割れ。たぶん、隆維君のほうだろう。
観察されてるねぇ。
「なかなか線路の見えるトコに行きつかなくてね、人に会いにくいし、ちょっと冒険気分だったよ」
「ふぅん」
感情の篭らない相槌で頷いて差し出してくれるクッキー。
「……苦いよ?」
一口食べたクッキーは甘くなかった。




