1/10 千秋取材
アッキさんの月刊、うろNOW!
1月10日 千秋君、地雷を踏む?
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千秋視点
緊張した。
高校の調理室での取材。澤鐘日花里さんとの時間。
少しどもった、気弱そうな印象を受ける女性だった。
一応取材に向けていくつかお餅を使った料理は調べてみた。
レシピを基本どおり忠実に作るのなら問題がないことも確認している。
『普段から普通に作れ』って怒られる程度には。
「ま、まず、千秋さんが料理に目覚めたきっかけはなんでしょうか?」
当たり障りのない質問。答えは用意したものを。
「そうですね。子供っぽい負けず嫌いな理由なんですが、おじに教わって作った料理がイマイチおいしくできなかったので悔しかったんですよ。それが理由ですかねー……っと、醤油に付けておこうね?」
「では、次の質問です、ね。2014年の目標が何かあったら教えて欲しいのですが……」
「そうですねー……
将来の進むべき目標を見つける。でしょうか? 何になりたいのかわからないんですよね」
そう目標は見つけていない。
「へぇー……。意外ですね。料理に関係する仕事に就くとかあると思っていたんですけれども?」
部活にまで入ってやってるとそう見えることもあるのだろうか?
料理は好きだけど、あくまでも趣味であり、プロは目指していない。
「そうなると良いんですけどねー……」
ただ、それを告げる必要性は感じないのであわせる。
どんな言葉がこの場に合うんだろう。
料理は好きだ。面白い。
「好きな事を仕事にする。それって、簡単なようで難しい事だと思うんですよ。『好きこそ物の上手なれ』なんて言葉はありますけれども、それでもやっぱり続ける事は簡単な事では無いですしね」
続けることはできる。それが趣味ならば。
ただ、仕事なら違う。そして俺は料理を仕事にする気はない。
「……」
澤鐘さんは思うところがあるのか、促すように黙っている。
どこまで喋りを続けるか、バランスが難しい人だと思う。
「結局は、才能のある人が何でもやってしまうんですよ。それがこの世の真理、なんですよ。そりゃあ、続けたいから出来る限りは努力はしますがね」
そして、才能ある人であっても折れる瞬間がある。その折れる原因は才能がある「そのこと」と関わりがあるかどうかは別になる。乗り越えられなければ「才能なんかなかった」んだろう。
その瞬間をどう乗り越えられるかがきっとカギになる。
才能は存在する。
何がしたいのか。
自分が何を乗り越えたいのか。
料理人に向いていないのはわかっている。技術屋にならなれると思うけどね。
そして世の中は不条理でまとまりがない。
「はい、完成。お餅の肉巻き。さっと出来る上に、お餅の新しい食感が出て美味しいですよー」
盛り付けは美味しく見えるように。これは慣れによる技術。
「……千秋君。最後の質問です」
澤鐘さんの言葉からスッと吃りがおさまりまっすぐな眼差しが注がれているのを感じる。
「……2013年に千秋君が一番心に残った事は何ですか?」
瞬間、過るのはライブの日の海の家。
周りに人はいたけれど彼女だけが眩しい。
でも、これは人に告げることじゃない。
「へっ? え、えっと……ぶ、無難ですけど、やっぱり梅原先生と清水先生の事かなー、なんて。アハハハ!」
色々ありすぎて笑うしかないよね。
「そうですか……。では、少々味見を」
うん。気分は毒味をよろしく?
調味料に妙な仕掛けがなければレシピ通りの出来だ。
呟かれた言葉が軽く心をひっかく。
わかってる。技術だけ積んでも料理は美味しさを追求しきれない。
「さ、澤鐘さん? ど、どうかしましたか?」
「いえ……。ちょっと思い当たった事があったので、少々」
物事を意味深にほのめかす人だと思う。
「思い当たった事?」
「それよりも
取材、ありがとうございました。後、後日、またご相談したい事があるんですけれども」
疑問はさらりと流され、次に続く話。
「は、はぁ……。自分は構いませんが、どうしたんですか? 急に?」
澤鐘さんは細々と使っていたメモにちらりと視線を送る。
確認か、演出だろうか?
「ちょっと……」
そして、やはり意味深げに呟いてからメモを片付け、
「大人からのアドバイス、って奴ですよ」
は?
「お疲れ様でした」と別れてから、調理室を片付ける。
何時ものように後片付けの指差しチェック。
宇美ねぇとの約束はクリニックが終わった頃に出かけるというノブ兄の車に便乗だからまだ時間はある。
澤鐘さんは不思議ちゃん系の人なんだなぁと思う。
次の約束は後日連絡をくれると言うので一応、メアドを交換した。
コレはどうグループわけしておこうか悩む。
増える予定のないグループ名は『うろNOW!』他に増えるとは思えないよね。
澤鐘日花里さん
話題で清水夫妻お借りしております。




