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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
338/823

宇美・クリスマスの過し方。

 やっちゃったなぁと思う。

 猪口先生と飲んで少し酔っていたのもある。

 ただ、信弘兄の気持ちがあまりにこっちを向かなさ過ぎて、切なくて……、心が痛かった。

 それでも昼間は公私混同しない態度で誤魔化して、ノブ兄の問いたげな眼差しをスルーした。こんな時は同じ職場と住んでいるのがお隣さんなのは痛い。

 それでも診療が始まれば通常運転。ノブ兄は平然としている。そこからは気まずいことなんかなかったみたいに普段通り。私のことなんかどうでもいいんだろうかと思う。

 ふわふわと公志郎くんとデートを楽しみにする柊子さんとお茶したりして気分を落ち着けたりで誤魔化す。柊子さんはいつだって公志郎くんへの想いをうれしそうに語る。時々年齢差をとても気にしているけど。


 クリスマスははなやかで休みをもらっても困るくらい。それでもクリスマスだしと連休で。

 イブは旧水族館で下準備を手伝って、ついでにシアちゃんを見せてもらった。

 重を連れて行ったら、鎮君が脱兎のごとく逃げた。追いかけようとした重を引き止めてお手伝い。去年まではそこまでじゃなかったと思うんだけど?

 翌日は未成年の重を置き去って隼子と飲み会。

 モールで『空!』と呼ぶ声が聞こえた気がして振り返った先、人ごみの隙間からほんのり赤い髪が見えた。


「行こう。飲むぞー!」

 さっきまでもはしゃいでたけれど、少し声が変わった気がしてやっぱりアレ鎮君だったんだなと思う。

 千秋君の方は最近は親類の女の子と比較的一緒にいるっぽい。やわらかな笑顔で楽しそうに見える。何か、心配してた気がするんだけどよくわからない。

 そう、隼子は否定するけど、鎮君に好意的に私には見える。

 人ごみの中、ちゃんと鎮君を見分けてる。

「隼子?」

「ん〜。生意気だよねー。高校生の分際でクリスマスデートとはさー。あいつ人付き合いニガテだから空ちゃんならちょうどいいのかもー? きっと空ちゃんなら逃げようとしても捕まえられるよねー。つーか海が怒る……よりむっつーの静かな怒りの方が怖いかなー。やだぁー。想像したら酔いさめたーやだー。早く次飲むのーー」

 ふわふわ言いつつ、途中から結構冷静に、そして酒をせびる。

 流れるように口ずさみながら得体の知れない動きは酔っ払いのもの、ポイ。だが、隼子は通常運転で動きが変だ。

「ねぇ、隼子」

「んにゃ?」

 ああ、けっこう酔ってるわね。ちょっと抜けた返答にそう思う。

「明日あんた仕事よね?」

「もっつろん! でもさーせっかくさびしー者同士キリスト様のお誕生日をおめでとうしよーよー」

 自信たっぷり得意気に腕を振り上げる。

 そばを通った人が迷惑そうに見ていく。

 ごめんなさい酔っ払いです。

「お葬式は?」

「お仏壇!」

「結婚式は?」

「理想はウェディング! つかちゃん可愛かったーー」

 正規の結婚式でも裏結婚式でも先生はきれいだったし、清水先生は……大変そうだったけど楽しそうだったわ。

「鎮くん」

 流れで振る。

「趣味が近いんだよねー。あと寄贈本チェックで面白いもの見つけるの得意だし、しょっちゅうちょっかいかけてくるからさ。クールな司書さんになれないんだよねー。ってなんで頭叩くの!」

 途中でありえない発言を聞いたのでとりあえず後頭部をはたいておく。

「あんたは元々、クールになれない場所にいるわよ」

「え!? 鎮のせいに決まってるじゃない!」

 歌うように「隼子ちゃんクールぅー」とか言っているのは軽くあしらうしかない。酔っ払いがっ!

「ないから」

「でもさー。まわりがコイバナしてると感化されるよね。イヤじゃないんだけどさー、それはあるんだけどさー、やっぱり古書に触れてる方が楽しいのも本当なんだー。それとさぁ、あの好きだなって感情が恋かなって聞かれると違うと思うのぉ。千秋君もさ、鎮もさ。逸美もさ。同じくらい好きだなって最近気がついたんだー。恋愛してなくても罪には問われないし、別に変じゃないでしょ? もし、好きが全部恋だったらさ、人としてちょっと自己反省がいるよーな気がしちゃうよーだ」

 イルミネーションのツリーを見上げながら言うからちょっとへんな雰囲気があって、隼子にコイバナ系を押し付けてたかなと思う。

「あっれー隼子ちゃんむっちゃ喋ってない? のどかわくよ? 次の店にはいろーぜい」

「ねぇ、コイバナ押し付けっぽかった?」

「うー? 宇美のはねー」

 じっと視線を合わせて笑われる。

「あのね、アレはコイバナじゃないさー」



 ?

 ナニ言ってるの隼子?





「恋情愛執盲愛信先生しか見えないって言う精神びょ……いったーいいったーい。そんなにぶたれて記憶が飛んだらどうすんのー」

 むかついたから後頭部をグーで殴った。

「大丈夫」

「ほへ」


 間抜け面だと思う。きっと私の目つきは据わってるんじゃないかなと思う。


「お酒のせいよ」




「うっそだぁああ!!」



 声をあげる隼子を引きずってイベント日料金のカラオケでひたすら飲んだ。

 だって、私も酔ってるんだもの。































「私は妹でも、娘でも、姪でもないのよ!」

 涙がこぼれる。

 こんな風に感情的になるだなんてそれこそ子供じゃないのに。

「……宇美」

「ずっと、ずっと好きなのっ! 私はずっとあなたのことだけが好き。他の人じゃダメなの」



 ああ。本当になんであんなことぶつけちゃったんだろう。


清水夫妻

青空陸海空姉妹話題にお借りしました。

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