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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
330/823

1/1 口論

 ぐりぐりと髪が掻き乱される。

「テス呼びダメ?」

「ダメよ。セーリーカ。芹香って呼ばなきゃダーメ」

 ランバート兄がぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。

 朝の朝刊のお手伝いから帰ってきた鎮兄が軽く髪を撫でてくれる。鎮兄年越し、徹夜じゃなかった?

 そのまま『ご挨拶』のキス。

「大好きだよ。シー」

「うん。大好き」


 なすがまま、キスされてキスを返す。

 ただのご挨拶。

 柔らかな空気。

 ただ、この国には向かない挨拶だと思う。


 甘えて甘やかされてベタベタな感じ。

 隆維と涼維のべたべたと違う感じがするのは二人の外見が違うから?

 それとも私が今いる位置がランバート兄の膝の上だから?

 とりあえず、私の上で兄弟愛でいちゃつくのはやめて欲しい。




 時々見える鎮兄の表情は『仕方ないな』なイメージ。

 隆維兄も同意してた。

 ランバート兄が約束があると出かけた隙をついて聞いてみたら、

「失恋引きずってるんだし、はじめ、メールで冷たくあしらっちゃったし、もちろん、バート義兄さんのことは好きだしね」

 って返ってきた。

 思ってたより軽い返答。

 内容は『優しくしてあげないとね』みたいな感じだろう。

 聞いてた千秋兄がぽかんとして軽く鎮兄をはたいていた。




 なんで?




「空ねぇと初詣行くの?」

「んー。なんか約束しそびれたんだよなー」

「堂々と二人っきりになったのに?」

 隆維兄が聞いて、ぼぅっと鎮兄が答えて千秋兄が疑問符を飛ばす。


 カラスマントがセイレーンにキスしてたのを目撃したのは一人や二人ではないらしいし。そういうところあるんだよね。人目をはばからないのは配慮が足りないんだよって言うとなんか、考え込み出した。

 まぁ、カラスマントのキスは安くてもセイレーンのキスは安くないんだから。

 コレは空ねぇが可哀想かもしれない。

「そろそろ、モールあく頃だから行ってくるー」

 隆維兄がコップを流しに持って行きつつ宣言する。

「初売り?」

「んー。雪姫ねぇちゃん詣で。奉納用ジェラートお持ち帰りパック買って行くの」

「電車?」

「ううん。散歩がてら」

 千秋兄の確認に答えつつ、マフラーやジャケットで丸まる隆維兄。めんどくさそうに手袋を受け取る。猫じゃなくて毛糸の手袋。

「気分悪くなったら電話しろよ?」

「んー。犬猫連れてくー。手袋(ねこ)が待ち構えてるし。待たせると爪たてられそうだからもう行く」

「モールに連れて入るなよ」

「当たり前だろー。わかってるよ」

 鎮兄の注意をめんどうそうに聞き流しつつ、隆維兄は出かけて行った。


「店の方行ってみたら? まだやってるのか、後片付け中か知らないけどさ」

 千秋兄が提案する。

 少し、思案してから頷く。

 鎮兄。

 何が不満だ!?


「芹香。本人同士の事なんだからちょっかいかけ過ぎないの」

「それは千秋兄もでしょ?」

 ケンカ売ってくるんなら買うんだからね。

「千秋、芹香も。新年早々に何やる気だよ」

「別に」

「売られたケンカは買うのよ!」

「売ってないから」

 ピリッと空気に緊張が走る。

「自分の態度、振り返ってから言いなさいよ。みっともないんだから!」

「芹香!」

 鎮兄の声にちょっとびっくりする。

「だって本当じゃない。何にも言わずになかったみたいにするくせに前と同じには振る舞えないんじゃない。『二人』ともそうやって何にも言わないんならわかんないわ!」

 わかんないよ。

「そういうの。キライなの。かっこ悪いし。ガマンしたもの。お兄ちゃん達が助けてなんかいらないって態度なのにも黙ってたもの。何もしてあげれないもの。妹だけど、一緒にいた時間はみあちゃんのあちゃんたちより短いもの。私が一番後にここに来たもの。……お兄ちゃんたちなんか大っ嫌い!!」

 途中からお兄ちゃんたちの顔なんか見てない。

 悔しくて悔しくて、わかんなくなる。

 飛び出して、追いつかれたら嫌だから走った。


 やだなぁ。






 今年一年こんな感じなのかなぁ。




話題に雪姫ちゃん空ちゃんお借りしました。

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