12/31 年越し?
キッチンに行くと隆維がパスタのお湯を切っているところだった。
「おい、重くないのか?」
「このくらい平気」
はらはらと見守っているとそこそこの手際でフライパンにパスタを放り込み塩と胡椒。
「よし! できた!」
「具材は?」
「いらない。パスタ食べたいだけだし」
「今日は晩御飯、ARIKAで年越しそば」
「うん。知ってる」
「チーズかけるか?」
「いらない。鎮兄も食べる? おやつにパスタ」
ちらりと見て首を横に振る。オリーブオイルかけすぎじゃないか?
「ふぅん、今日も無事、重ねぇちゃんから逃げ切れたの?」
少し遠い目をして頷く。
「何で追い回されるんだろう」
「ん? 逃げるから。ソレとメールと電話とSNS系全部着信拒否されたって怒ってたよ?」
……
「昔っから追いかけてくるんだよな。宇美ねぇちゃんも重ちゃんを止めてくんないしさ」
「原因は?」
「はじめてあったノブにーにした挨拶かなぁ」
「挨拶?」
「ん。挨拶。隆維たちに会った頃には修正してたけどね」
「ふぅん」
さほど興味なさげにパスタを食べる隆維。
「あ。また一人で食べてる」
パタパタとやってきた涼維に一口分量パスタを差し出す隆維。
「あーん」
「はい。どーぞ」
「べたぎと」
「うん。いいオリーブオイルだからいいでしょ?」
「えー。もう少しさぁ、あ、タバスコかフライドガーリック!」
「黒胡椒の追加くらいなら妥協してもいいけど?」
「えー」
文句をつけつつ黒胡椒をガリガリとけずる涼維。
「うん。おいしい」
「ずっけー!!」
まず食べるのは隆維で、涼維が不満たっぷりに苦情をつける。
「ほら」
「ん」
それでもすぐに二人で食べ始めて解決する。
俺と千秋ではまず見られない光景だ。
改めて思うとこの差異はなんなんだろうなと思う。
「いちゃいちゃだなぁ、お前ら」
「え?」
きょとんとした涼維の横で隆維がふふんと笑う。
人を見下した態度が似合うってどーなんだよ。
「羨ましいの?」
「んー? わかんね」
ふっと息を吐いて隆維が涼維に皿ごと譲る。
かちゃりっと真新しいストラップのついたスマホ。
視線に気がついたのか、掲げ見せてくる。
「おにぅだよ。パティからのクリスマスプレゼント」
「そっかー」
「そーだよー。んじゃ、送信」
「送信?」
「うん。空ねぇに鎮兄が重ねぇちゃんに追いかけられるから時間取れなくてさびしがってるって」
!?
「カラスマントで行くから初詣一緒に行けそうかこっそり打ち合わせれるといーねって送っといた」
!?
「カラスマントで年越し?!」
「たまにはいーんじゃね? 俺はチビたちと遅くなる前に帰って寝るし。涼維は?」
聞かれたとたん、ぷぅと膨れる涼維。
「隆維と一緒いる」
「ん」
あ、それならやっぱ黒だよなー。
カラスマントセット、どこにしまってあったっけなー。
空ちゃん、話題にお借りしております。




