12/23 ホビー高原にて。
重。
「他に相手はいないと思うんだよねー」
ふぅっと息を吐く。仕事の邪魔だからと宇美に追い出されて。ぼやきに返ってくるのは同意の声。
「いないと思うけどな」
「センセとは進展あったの? あ。いいや。むかつくから答えなくて」
「遠慮しなくてもいいのに。いい加減、ノブ兄は宇美さんに譲っとくべきじゃあ?」
「ヒロちゃんがそう選ぶんなら、もちろん、宇美でいいわよ? ぱっと出にとられるなんて勘弁だけどさ」
へらりとのろけそうなナオズミがうざい。
時々のメールでうまくいってるらしい情報はゲットしてたけど。
「うまくいってる恋愛話なんてうざいかぎりね」
ため息と共に思いを吐き出す。
「澄先輩、クリスマス会プレゼント協力感謝……。後でメールするね!」
開いたと思ったらぴしゃりと閉められる入り口。
「ナニ、今の鎮の態度……」
追っかけて欲しいの?
ねぇ。
そういうことよね。
「重」
「きっと、追いかけて欲しいのよねぇ。鎮ちゃんったら相変わらずテレやさんなんだなぁ♪」
うん。シメとかなきゃとは思ってたんだよねぇ。
「だってさぁ、ナオズミ、あいつ、着拒してきたんだよぉ。そこはそう、ちゃんと理由聞かなきゃダメだと思わない?」
絶対泣かす!
「思わない思わない。つーかどんだけいじめてんだよ」
「ヒロちゃん情報ゲットツールのひとつだったのに役目放棄の罪は重い! あと、弟分としてかわいがってるだけでいじめてないよ?」
「うそつけ!」
そんなナオズミの失礼な言葉を背に「ホビー高原」を出る。
時間稼ぎされてしまったか。
鎮の姿は見えなかった。
実家滞在中にシメればいいか。
日生んちの保護者「暁君」はヒロちゃんと仲がいい。鎮とはその絡みでよく遊んでやったものだ。
麻衣子や菊花たちとすぐ仲良くなった千秋とは違って鎮はアニマルクリニックで動物図鑑を広げてたり、日本語がまだ得意でない弟たちに読み聞かせをしたりが主な行動パターンだった。
必然的にヒロちゃんのそばに入り浸っていたあたしたちとは近い位置にいたわけだ。
「ごあいさつ」
そう言ってヒロちゃんの唇を奪ったあいつの自然な動きが許せない。
あの時は宇美も半泣きだった。
アレは初対面。八年前だったか。宇美のうろな高校受験に響くんじゃないかとちょっと心配になったもんだ。
その出来事が薄れることなく二年、水族館がなぞの改装されたなと思ってるとあいつらが越してきた。
つい、追いかけていじめ倒したのはちょっとやりすぎかもしれないと今なら思う。
まぁただの恋する少女の暴走だ。
でも、逃げられるといじめたくなるのも心理なんだよねぇ。
隼子の図書館にでも遊びにいこっと。
直澄くんお借りしました。




