12/23 戸津アニマルクリニックの見えないトライアングル
「ヒロちゃん!」
「お? 重じゃないか」
飛び込んできた少女。癖の強い黒髪を真後ろで一つに束ねている。
双海重19歳。宇美の従姉妹だ。
「おとーさんがうろなに帰ってるらしいから、あたしも帰ってきちゃった。本当は大人の女性の色気を身につけるまで帰ってくるつもりじゃなかったんだよ?」
その言い方に笑う。
「なんでだ?」
「だって、あたしは、ヒロちゃんのお嫁さんになりたいのよ? 大人の女性の魅力でヒロちゃんをオトシたいの」
昔っからそんなことばかり言ってくる。
重はふいに瞳を潤ませて、見上げてくる。
「恋人、決まっちゃった?」
そんな相手は見つからないなぁ。
欲しいんだけど、運命はうまく回らない感じだ。
「イイや、相手は見つからないなぁ」
がしがしと重の頭を撫でる。
一年近く見ないうちにイタズラの仕方を凝るようになったなぁ。
「じゃあ、ヒロちゃんは重と宇美のどっちが好き? 宇美が本命って言うんならあたしは愛人で我慢するわ!」
ぶはっ!!
のど、き、気管がっ!
「ちょ、重? せ、先生?!」
「あ。宇美は心配しないでお仕事でしょ。ヒロちゃんの看病はあたしがするわ!」




