クリスマスデート☆照れ臭くて
「なにか、これは食べたいなぁってモノある?」
モールの食品売り場そばで空ねぇに聞く。
「一応さ、朝から確保はしてみたんだけどね」
飲み物とかもあるはずだしね。
千秋も、飛鳥ちゃんと過ごすって言ってたけど、飛鳥ちゃん五時まで仕事だし。
「いやぁ、思ったより時間あってさ。だって、そのさ、いつものやっちゃってて」
もごもご言いつつ、軽く視線をそらしてしまう。
「あー。わかった気がする」
思いついたらしく呆れた表情の後、抑えきれないようにくすくすと笑い出す。
「そーだよ。終業式は昨日だったんだよね。そういっちゃん、俺が勘違いしてんの気がついてたろうにツッコミがないんだよ! ひどくね?」
楽しそうに笑う空ねぇ。
ゆるい編み込みが少し崩れてきている。
さっき人混みで抱き込んだ時に崩しちゃったかなぁ。
手を伸ばして髪に触れる。
「少しさ、崩れちゃったね。さっき抱き込んだ時、もしかして髪とか引っ張っちゃってた?」
笑いを引っ込めてぬいぐるみに顔を埋める空ねぇ。
カシャリとビニールの音が聞こえる。
「空ちゃん?」
「……」
小さな囁きが少し聞き取れなくて。
「痛くしちゃってた?」
ふるふると左右に振られる頭。
覗き込んでも、ぬいぐるみに阻まれて表情がわからない。
何処かで、マズった?
あー。
触っちゃダメだった?
「えっと、ごめん。なんか、マズった?」
「……ぅの」
「の?」
不意の動きで強めの眼差しで見つめられる。
空ねぇの顔は赤かった。
「違うの!」
少し大きくそう言うとまた、ぬいぐるみに顔をうずめてしまう。
……
まずったのはマズったらしい。
「えっと、行こう、か」
俺もなんか照れ臭くて空ねぇをまっすぐ見れなくて、手を引いて歩き出すことにした。




