12/25 旧水族館。ーピアスー
「お迎え来たら出かけるし、三日ぐらい帰ってこないんだから、開けてみて!」
盛大に『名乗らない』マナーを破る芹香。
ため息をつきつつ、頭をぽんぽんとしておく。
仕方がない開けるか。帰ってきた時にしようと思ってたんだけどなぁ。
ちらりと千秋と視線が合う。
チビどものプレゼント準備の光景を思い出す。
何度、隆維に体調崩すほどの集中力をかけてまでするんじゃないと注意したことか。
そして、芹香がソーイングキットを使って作成している謎の物体。
アレ、お手製プレゼントな予感がしてるんだ。
黄色い毛糸の塊や、青いフェルト、手伝おうかと言うと逃げ出した。
お前、雑巾作ろうとすると丸い物体ができるよね?
そっと開けると青いフェルトが見えた。
うん。
困った。
なにに?
もちろん、反応にだ。
ココで青い未確認生物の首吊り死体か生物標本の再現? とか発言したら、とてもまずいことは承知している。
しかし、反応を待たれている。せめてこの生物がなにに属する生物なのかの想像がつけば!!
救いの手は思わぬところから現れた。
「鳥さんッスね」
鳥?
「青い鳥かぁ。ありがとな。芹香。ところで、なんで十字架を抱いてるんだ?」
キッと睨まれる。
あ。マズった?
「こうするためよっ!」
飛びつかれて慌てて態勢を維持する。
「よし」
いってー。
「めりくり鎮兄♪ 今日はつけててくれると嬉しいなぁ~」
ぎゅっと抱きついてきて軽く頬にキス。まぁ芹香からはクリスマスくらいかな?
小さな十字架。どうやらピアスだったらしい。
「あ。空ねぇ、いらっしゃーい」
キスを返してやろうかと思ったら逃げられた。
「メリークリスマス。ねぇ、開けて♪」
芹香……
ソレもお手製なら自爆だぞ……
自爆だった。
青い羽が白く丸いいびつな物体に刺さっている。
「ねぇ、芹香。食器洗いたわし、かなコレ?」
不意に千秋の声が響いた。
そういえば千秋も渡されてたな。
黄色い毛糸の塊。
隆維と涼維は渚ちゃんに挨拶してる。
話題は、うん。きかねぇし、なかったことにする!
だって誰も何も言わなかったんだモンなー。
「……よ」
芹香がぽつっと何か言った。
「マフラーだもん!」
「むり。せめて後三十センチは編んでくれないとマフラーとは認められない!」
ま、まぁね。
冬休みは家庭科の練習かなぁ。雑巾作りから。
「メリークリスマス。空ちゃん、暖かいの飲んでから行こうよ。プレゼントは後でいいよね?」
戻ってくるし。
「メリークリスマス。鎮君」
にこりと笑う空ねぇがいつもと違う気がしてよく見るとゆるく髪が編みこまれてるのに気がついた。
そんな空ねぇは歪な芹香製の手のひらに乗っかる白い塊を眺めている。
「あ」
ん?
「コレ、カラスマント君なんだね」
!?
「さすが空ねぇ!」
我が意を得たりとばかりに芹香が胸を張る。
マジデスカ!?
いや、つい思考がカタコトに。
「その羽は外れるから鞄のワンポイントピンみたいに使ってね?」
「テスーー!!!」
「あ。ゲイルーーー! めりーくりすますーアミューズメントではコレかぶってねー。頑張って作ったんだから!」
出入り口からの声に芹香が反応してすさまじい条件を出す。よれよれの赤い帽子らしき物。拷問か?
一回、自分の頭からその帽子を取ってまじまじと見て金髪の少年はにっこり笑い、かぶりなおす。
「アメリカの家に帰るまでかぶってるね」
まわりが困惑するからそれはやめてやれ!
「アメリカにいる上の義兄さんの長男君。隆維たちと同い年だよ」
そっと空ねぇに解説する。
「ちょっと、騒がしくなるかも」
空ちゃん
ちらり渚ちゃん、緋辺・A・エリザベス嬢お借りしました。




