12/8 節約生活
「最近、どうしてかなって思うんだよね」
「どうかしたの飛鳥ちゃん?」
「んーっとね、機嫌悪いんなら口開かないでね。ちーちゃん」
「悩む頭が発達してるわけでもあるまいし」
「ヒロタカくんは図々しいと思うんだよね?」
広前典孝くんは職場の同僚で嫌味メガネだ。
「卓上で扱う方が楽だし、光熱費の削減になる。大型冷蔵庫はうちに設置して共有にしてやったろうが」
コタツでノートPCを弄りながら言う。
ついでにケチ。
「ガス代は私持ちやん」
「俺、食材費プラス一日百円使用料払ってると思うんだけど?」
ちーちゃんがそぉっと主張する。
私とヒロタカくんは顔を見合わせる。
「十に八ハズレのないものが続いたら金払ってもいいけど、食えることは食えるってだけのモノの処理してやってんだから感謝して払ってりゃいいと思うけど?」
ちーちゃんが沈黙する。
ちなみに十に七ハズレず美味しいものが出されたら、次は別のとこで食事するようにしそうだよなって思わせるのがヒロタカくんの印象だ。
「二十日の試験レベルどんなんだろうねー」
「できなんか関係ないだろ? 出席単位さえ揃えられればいい」
「制服結構可愛いんだよねー」
「この年で制服着て歩け。一文の得にもならないコスプレイベントかって感じだな」
私とヒロタカくんの間に火花が散る。
「人がせっかく話題を振ってるっていうのに!!」
「ポイントサイト周回中なんだ静かに作業させろ!」
コトン。
コタツの天板に置かれる皿。
野菜炒め餡掛け。カレイの煮付けに白ご飯。白菜のお漬物。汁物は大根と豆腐のお味噌汁。
「ぉお。今日は和風だ!」
…………
「ちーちゃん、すっごくご飯がすすむよ。おかわり」
「正直に全体的に辛いって言え、飛鳥。千秋、高血圧で病死狙いか? ちなみに餡掛けは表現しづらい味だ」
ごはんをよそってもらいながら、唯一まともな味のお漬物に至福を感じる。
スーパーあたりの特売品かなぁ。美味しい。
「ヒロタカくん、サイト巡り続行しながらのご飯は液体がかかる確率があるからやめた方が無難だと思うな」
「タイミングってものがあるんだ。ほっておけ。それに無心でなければこんなもの食えるか」
はぁっとため息をついて差し出されたお茶碗にご飯をよそうちーちゃんはそのまま刻み海苔をご飯にかける。
…………へんに、赤くなかった?
「こんの、味覚音痴がぁあああ。食材に謝れ!」
そろりと玄関から外に出て顔を出してるご近所さんに頭を下げる。
「すみません。すぐ黙らせます」
「いっつも大変ねぇ」
ぺこぺこ頭を下げてから部屋に戻る。ちょっとさむかった。
「ヒロタカくんは近所迷惑で定着したいの?」
呆れを含んだ私の言葉に取り合えずの怒りを抑えてくれた。




