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お部屋で言い訳タイム

12/7

 ホットドリンクはミルクティー。

 一口飲んで息をつく。

 まずは。

「空ねぇ、えっと、その、ごめん?」

 ああ。もうなに言ってんだよ。俺!?

「そのさ、あーゆー人の多いトコで言うもんじゃなかったよな。と、ちょい反省?」

 ぅう。なんか落ちつかねぇ。

 こーゆー二人っきりもマズイのか?

 空ねぇが口に含んだ飲み物を嚥下する。

「だからさ、そのさ、言い訳タイムよい?」

 うまく言葉がついて出ない。

 空ねぇが頷いてカップに口をつける。

「えーっとさ、……今日、半端なく夢見悪くってさぁ、ちょっと引きずってたのはあるんだ。あと、芹香達がほのめかしたように、ってアレ、ほのめかしたのレベルじゃねーけどよ、懐が寂しいのもマジかな。でもさ、それはそれ以上の経験を体感できているんだし、後悔はしてないんだよ? ただ、簡単に総督やおじさんがさ、デートの介入をしようとするから苛立つんだ」

 一つ息を整える。

「だってさ、デートとかで誘って過ごす相手との時間は二人の時間だろ? ちゃんと自分の身の丈にあった過ごし方がいいなって俺は思ってるんだ。そこに他の人の存在を感じるのは少し面白くないし、確かにさ、アレの影響でバイトにかけれる時間は減ったけどさ、それ以上に楽しい話題になるネタだとは思ってるしさ。空ねぇの歌は綺麗だったなぁとかさ」

 言い訳トークに空ねぇの歌ネタが混じったせいか、空ねぇの顔が少し赤い。

「それにデートって言ったらさ、空ちゃん、緊張するだろ? 遊びって言っといたらいろんな意味でハードル下がるかなぁって思ったんだ」

 何かに照れてるのかうつむき気味の空ねぇの顔を覗き込む。

「怒った?」

 我ながらちょっと姑息だもんな。

「クリスマスなんてやっぱさ、特別な日だし……」

 俺と過ごすのもなんだよねって続けられなかった。

「…………」

「……」

 空ねぇが俺の顔をつねってた。

 ちょっと痛い。

 顔は赤くてなんだか泣きそうにも見える。


「空ねぇとさ、過ごす時間って凄く安心するんだ。ふんわりした感じ?」

 モールでの買い物はすっごく楽しかったし。





 でもさ、



 だから、




「安心できる分、こわい」




「夢が、忘れちゃダメって言ってるみたいでさ、今日はちょっとピリピリしてたんだ」

 そう、たぶん。


「好きの種類が変わるのがこわいんだ。たぶん、俺は自分がソレに立ち向かえるとは思っていない。空ねぇへの好きが少し違う好きに変わってるような気もしてさ、たぶん、不安なんだ。空ねぇもいなくなるのかもって思うとさ、とてもこわいんだ」



 一つ息をつく。


「ごめん。何言ってんのかわっかんねーよな。自分でもわかんねぇ。不安だから距離を取りたくもなるし、安心したくてソバにいたくもなるんだ。そんな揺らいでる心境で誘ってるし、 断られても仕方ないと思ってるし」



 ああ。またグルグルしはじめてる。



「いなく、ならないよ」

 空ねぇの声。

 優しくて安心感を誘う声。

 寄り添おうとしてくる不安感がこわくていろんな感覚に目隠しするように空ねぇを抱きしめた。



 少し、落ち着いたので、空ねぇに頬に軽くキスしてはなれる。

 ただ、かなり自分のグダグダ加減に嫌気が差す。


 ああ、もう。


 切り替えろ俺。


「でね、見たい映画ある? さくーっとチケット予約しようと思ってるんだよね」

 言いつつ、収納BOXの中からノートPCを引っ張り出す。

 呼び出すのはショッピングモールの映画情報サイト。

「この日も旧水族館ウチは六時閉館でさ、節約コースとして、閉館後のレストランスペースで食事って、どうかなぁ?」

 千秋に頼んどけばてきとうに見繕って、形は整えてくれるだろうしな。

 それとも、デートコースとしてはイマイチ、かなぁ?

空ちゃん、お借りしております。


くどいてるのか、突き放してるのかどっちのつもりなのかが謎。


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