デスロード編 登山中。
山道を登りつつ、素朴な疑問。
山辺はどうして鎮兄に蹴りを入れながら登山中なんだろうか?
二人の背景に字幕を入れるとしたら『余裕』だろうか?
反対に『ギリギリ』という字幕が似合いそうな二人は千秋兄と清水先生だろう。
ちょっと意外だ。
時々北のおじさんが上の方からおりてきて、小学生組の状況や山道の様子を父さんに伝えに来ている。
伝え終わったら上へと戻っていく。
あの体力は化け物級だと思う。
「清水先生。手荷物半分、先に持ってあがってましょーか?」
先に行く前に北おじさんはそう言って清水先生の荷物を減らしていた。
もしかしたら清水先生ごと荷物として持ってあがりたかったのかもしれない。
そうなったら先生のプライドがやばいか?
この山には狗や、猫のあやかしの伝説がある。本当だったんだけど、山辺にはスルーされた。
猫のあやかしは山中の伝説で、狗の方は山犬寺と縁があると言われている。
まぁそのあたりは父さんや鎮兄の方が詳しいけど。
「大丈夫か? 清水」
「まだ大丈夫ですよ。荷物も減らしてもらいましたしね」
梅原先生が心配そうに清水先生を覗き込んでいる。
というか、なんか女性陣の体力が半端ないような気がする。
「山辺の兄さんってどんな人?」
「3種類いるけど?」
「3種類なんだ」
面白い表現だなー。
「自分の妹なんだからこうあるべきって考えを押し付けてくるのと、ありのままでいいよって言ってくれるのと、前向きにいこうって言うのの3種類」
「押し付けはよくないよな。それとなく促して導くかなぁ。妹には幸せになって欲しいし」
鎮兄が言いながら頷く。
「いつの日か見知らぬ男に嫁いでいくものだからな」
上の兄貴たちと涼維が微妙な表情になる。
たぶん、オレも微妙な表情になってる気がする。
そう、清水先生の発言はオレ達兄弟にある種衝撃を与えたのだ。
「嫁に行っても帰ってくることもあるけどねー」
父さんが楽しげに言う。
いや、ソレはソレで微妙だよ?
「あら。死別は仕方ないでしょーだ」
父さんに軽い感じでおばさんが返しを入れていた。




