12/7 安全ピン
視線を感じてそっちを見れば千秋が見ていた。
「安全ピン……」
「ほら、クリスマスにはにーちゃんたち来日て聞いたから、準備準備」
それにこれなら外すの忘れねぇし。
「でも、作業中に引っ掛けるんじゃないの?」
「んー。ツリーの設置ん時は外すって」
「昨日は芹香連れて、ショップ行ってきたんだって?」
「ああ。いろんな石があったよ」
「ふぅーん。いいモノあった?」
「空ねぇのバイト先だった」
「そう。よかったね」
「ん」
しっかり計った素材。
手慣れた手つきで配合していく。
朝飯の準備中だ。最近、おじさんはフードコーナー用のメニューは作るが家用のメニューはあんまり作らない。まぁ、貰ってきてオッケーなんだけど。
「科学実験みたいだな」
「似たようなもんかな?」
千秋が手を動かしながら、じっと混ぜている最中のものに視線を落としている。
「混ざり具合が変わるタイミング。匂いとか見た目とか手にかかる感触。そういうタイミングを測れればって思ったんだけどさ。結局、ダメな気がする」
ふぅっと息を吐く千秋。
「料理担当、鎮に返そうかなぁって思ってる」
えー。
「母さん、ブーイング確定だと思うぜ?」
「知らないよ。 母さんがどうにかしたらいいんだよ」
えーっと。
どうにかされた、よな?
じっと見てたら視線を外された。
「つまり、何か? 母さんに強引に作れと要求されたい。っつーわけか?」
「それイヤ」
ふわりと冷たい風。
「鎮?」
「ドアが開閉されたっぽい。ちょっと見てくる」
ドアを開けて外に出ると、大きな影が空をよぎった。
「でけぇ、鳥」
シアちゃん、喰われないといいな。って、シアちゃんでかいから大丈夫か。
えっとー。とりあえず、アレ、拳骨確定でいいよな?
「おはよー。隆維の友達?」
白髪の少年。汐ちゃんや芹香と同じぐらいの背の高さか?
「んー? 郵便やさーん」
隆維がにぱっと笑って言う。
ほうほう、つまり、
「フィンランドに手紙を届けてくれる。と?」
「えー? アイスランドじゃなかった?」
「グリーンランドだろっ!」
つっこみは郵便やさんと紹介された少年だった。
「さすがだ。鳥を連れた郵便やさんは不思議の使者か。朝ごはんを一緒にどう? 時間が有るならツリーの飾り付けに混じってかねぇ?」
イベントごとは人数いたほうが楽しいし。
白いでっかい鳥。鷲かなぁ? 鷹かな? ……あれ?
……サイズで呼び名が変わってるだけ、だっけ?
ま、いっか。
かっこいいし。
もーきんるいだ。もーきんるい。
「いこ。ウチの朝ごはん、おいしいかは別として食べれない味って事はないから」
隆維がそう言いながら少年の手を引く。
「か、」
『か?』
「勝手に話を進めてんじゃねぇ!」
え?
「朝ごはん抜きはダメだよ?」
フィル君お借りしました。
話題で空ちゃん出てます。




