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十二月某日・取材依頼?

取材のお話をいただいて。

「なんで俺?」

「さぁ?」

 鎮も不思議そうに首を傾げる。

「ただのヒラの料理部員なんだけどなー」

 生活パターンは基本変えてないし、夏前以外は馴染み以外と喋ることも格段に減る。

 二学期から生来の赤毛を隠すのをやめたくらいで。

 それも目立ってんの?

 いや、そのぐらいはたいしたことはないはずだ。

 温泉津先生みたくあそこまでのはっきりした赤というわけでもないしな。

旧水族館(うち)の外での取材なら好きにしたらいいよ」

 おじさんがラッピングをしながら呟く。クルクルとリボンが螺旋を描いていく。


「おじさん、宣伝とかする気は?」

「ない。旧水族館(アレ)は赤字事業だからね。ほどほどがいいんだよ。ほどほどが」

 間髪入れず回答。はっきりキッパリだ。

「赤字……なんだ」

 鎮がちょっと困惑したようにこぼす。

「趣味、だからね」

 おじさんは赤字であることには気にしていないようだった。ただ、趣味と言い放つ。

「いいの?」

「赤字幅は最低限に抑えてるし、他で稼いでる。まぁ、今年は持ち出しが結構あるけど、まぁいいかなぁって感じだね」

 おじさんその辺は軽いよね。

「いいかなぁ。ではない! 持ち出しがあるという時点で本格的に赤字だ!」

 ノックなしで入ってくる総督に鎮が飲みかけだったお茶でむせる。

「ホビー高原さんが最近年末商戦で居づらいからってうちに入り浸らなくてもいーんじゃあ? 総督」

 むせて、涙目で言ってても嫌味になりきれないぞ。鎮。

「ああ、秘密結社事業に病棟の一部をテナントとして貸したんだよ。一応、大家と店子な感じ?」

 おじさんがのんびりとラッピングを続けながら説明してくれる。

「ついでに全体の経理もみる約束だ」

「それはどっちでもいいんだけどねー。納税に不備さえなければ」

 よく見れば、総督の手には帳簿が数冊。

「ギリギリ不備はない。しかし!」

「しかし?」

「意外とザルいな」

「脱税とか不備ありって言われなきゃいいよ」

 総督の視線にイラりとしたものを感じる。


「取材ネタってなに?」

 それがねぇ。

「『美味しい御餅活用術』だって」

「餅」

「そう、お餅」

「餅はいいな! 正月の醍醐味の一つだ」

 総督的にはそうなのか。

「ピザ、グラタン、揚げて砕いて御茶漬けに混ぜるくらいか?」

 鎮が思いつくもの。うちでの食べ方をあげる。

「雑煮は?」

 総督が突っ込む。

 俺と鎮は視線を交わす。

「あんま食わねぇ」

「だね。ちょっと調べてはみるつもりだけどね」

 それにしても取材ってどんな感じなのかな。

 ちょっといい経験になるかな?




温泉津先生、話題でお借りしました。

ホビー高原、話題でお借りしました。

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