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12/1 戦闘員勧誘

総督暴走中

 何か言いかけていた健を止める。

 おじさんと総督が意味ありげに見てきたがスルー。

 空ねぇの二十五日は海ねぇとの話し合いで既にキープされている。

 後は鎮が誘えば無事完了だ。

 当日の旧水族館の立会いサンタはリズさんが引き受けてくれたって聞いてるし、料理に関しては三春さんが普段のお礼にバイトしてくれるらしい。

 あと、飛鳥ちゃんと約束しておかないとな。

「千秋、予定いれてたのか?」

 健が小声で聞いてくる。

「入れてねぇよ」

「そっかー。鍋島と過ごす。とか言われたらドン引きだったわ」

「イイな。それ」


 健が思わぬ提案をしてくる。

 総督とおじさんの眼差しが気にならなくもないが何か言われないならかまわない。

「んじゃ、俺出かけてくる!」

 食器を片付けた鎮がそのまま出かけると声をかけてくる。

「どこ行くんだ?」

「飛鳥ちゃんのとこ。梨沙さんが今は使ってないコタツくれるって言ってたし、鈴木雑貨でかおるさんがこたつぶとん格安で譲ってくれるって話を昨日チラッとしてたんだよ」

 おじさんの問いに答えて、ふとこっちを見てくる。

「確か机と暖房器具ない部屋なんだろ?」

「そう。でも、受け取ってくれないんじゃ?」

「持って行ったら部屋に入れてくれるって」

 ヒラヒラと気楽に手を振る。

 その自信はどこから出てくるっ。


 見送ってコーヒーを飲む。

「で、健くんは戦闘員になる気は無いかな?」

 総督がいきなり振る。

「借金はねぇよ」

 総督のことが気に入らないらしく、噛みつき気味の健。

「そこそこ人脈あるだろ? 使える人間は使い方次第だからな」

「へっ。上から目線かよ」

「現状、どっちの立場が上かは明確だね。職歴に財力、年の功と、もう少し敬ってもかまわないんだよ?」

 総督がニヤニヤと健に言葉をかける姿は夏のビーチで見たチンピラ姿と合間ってよく似合ってる。

「何かで完敗だと思わせるネタがあるなら対応を変えてやるよ。武力財力気力根性なんでもいいぞ?」

 と言うか普通に対応がチンピラぽくないか?

「総督。問題を起こされるのは困るんですけど?」

 おじさんがゆるい感じで総督をたしなめる。

「何、初期の教育が重要だからね。力関係ははっきりさせておかないと」

「武力でもいいのかよ?」

 苛立った感じで総督を睨む健。

 総督はその様子にただにやつく。

 場所を移しての勝負は総督の圧勝。

 まぁ、健は鎮より弱いし。

「やれやれ。力任せに動いても労力を無駄に使うばかりでつまらんぞ? 頭が悪くても構わないのはカモと可愛い女だけだぞ?」

 総督のいい女の基準は『都合のいい女』らしい。たぶん、『若くて』がつきそうな感じだけど。

 健、意外と趣味が合うんじゃあ?

 そんなことを言われて舌打ちをする健。

「だいたい、仕事ならともかく、犯罪すれすれ、検挙されかねん状況の者が近くにいると言うことはまともに学習しようと言う者にとっては迷惑でしかない。すこしでも理由は何であれ学校に通ってみるつもりになったと言うんならよく考えることだ」

「あんたには関係ないだろ?」

 総督が軽く空を仰ぐ。

「まぁ、だから、暇だからと言っているだろう?」

「暇つぶしで他人の人生に干渉してんじゃねぇ!」

「じゃあ、暇つぶし程度で揺るがない人生を貫きたまえ。気に留めて干渉すると決めた以上、有坂くんの意志は私にはどうでもいいことだからねぇ」

 総督はにんまりと笑う。

「悪いことにはならないんじゃないかな? 最低賃金だけどバイト代は出るんだし」

「まて! 俺には借金はねぇ!」

 おじさんのとりなしに突っ込みを入れる健。

 あー、結構まじめに話聞いてたんだ。

「他に仕事が見つかるようならそっちに行ってもいいが、ぶらついてる若くてイキのいいやつを何人か紹介しろ。戦闘員は必要だからな」

 ふっとおじさんが笑う。

ちづるちゃんの学費」

 ぴたりと健の動きが止まる。

 たぶん、母さんは請求することはない。

 鎮に相手が見つからないならちょうどいいかわいい娘にって、あれ? このままだと俺に振ってくる可能性があるのか?

「もしかして、健おにいさんとか呼ばなきゃいけなくなる?」

 俺の呟きに健は頭を抱えてうずくまった。



 その反応はなんだ!?

青空海さん、空ちゃん、お名前借りてます。

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