12/1 無意識
泣きそうだ。
どっか、悔しい。
ショッピングモールはクリスマス仕様で楽しそう。
猪口先生は、信弘兄の後輩で三十歳。こいしがさきアニマルホスピタルという少し大型の動物病院に勤務している先生。忙しい時にヘルプに入ってくれる先生の一人。
優しくて明るい素敵な人だとは思う。
でもそれだけ。
そして、どうしてその人とデートが信弘兄の手でお膳立てされているのかと思うと切なくなる。
こういうネタは隼子には言いにくいし、幸せ真っ盛りなとこにも言いにくい。
なによりもこの状況を告白することが苦痛だ。
八つ当たり的に服を選ぶ。
ただ買い終わったあとに見たらミッドナイトブルーのワンピースと白のジャケット、鸚鵡のブローチが袋に入っていた。あと、スカーフとシャツが無造作に数着。
いくらなんでも、他の人とデートをしたことが一度もないなんてふざけたことを言うつもりはない。
ただ、意義も意味も見出せないだけだ。
「あとは靴ね」
「次は、宇美の番ね」
のんびりと発せられた母さんの言葉。
前日に振られた他の人とデート話のことなんか教えてなかったからなー。
日生さんちの兄妹が信弘兄を責めてくれる。
陸ちゃんや海ちゃんも便乗してくれてるんだけどね。
あのあとこっそり『付き合ってる人いたのか?』って聞いてきたのは猪口先生とのデート話を振った後だからだろうし。
「いません」って答えたけど普段通りだったかなぁ。
バタバタしはじめてきっと誰も気にしてなかったと思う。
でも、
本当にこれっぽっちも異性として意識されてないんだなぁ。
人混みに混ざると他人への関心が薄れる。
だからじゃないけど、何処かで泣きたくなった。
青空陸ちゃん海ちゃんチラリ借り。
披露宴チラリ借りしてます




