キャッチセールス?
11月の後半系
「お!」
いきなり攻撃されて拘束される。
「なっ!?」
「いやー、有坂のたけちゃん。会いたかったよー」
攻撃してきた相手の軽い口調。
新聞配達(朝刊オンリー)のおっさんだ。最近、鎮の奴が懐いていたと思う。
「何しやがるんだ!! おっさん」
「まだ二十九だ」
怒鳴れば返る言葉。三十前なんだ。
いや、そんな情報はイラねぇ。
「おっさんじゃねーか」
「まぁいいか」
「いいんじゃねぇか!」
「高校進学興味あるんだってね」
ぐれた物言いを抑え、静かに囁いてくる。キモいから耳元で囁くなー。
「ねぇよ。…………誰から聞いた?」
「シズ! 定時制の願書配布してるんだー。ここで記入して提出しちゃわねぇ? 今なら、バイト先斡旋及び制服教材費もオフになっていて超お得感」
得意げに言い、そのまま流れるように勧誘。
「どこの悪徳キャッチだよ!?」
どこのテレビショッピングだ!
「えーっと、うろな高校定時制?」
朝のランニング中や犬の散歩中の人たちがチラ見してくる。
「見てんじゃねーよ」
見てるだけで誰もこのおっさんを注意しねぇ。見せもんじゃねぇ。
「あー、椋原さんちのマサムネ君も良ければ願書ポスト入れとくからよろしくねー」
犬に遊ばれつつ、散歩されてる同年代におっさんは明るく手を振る。
いきなり呼ばれて驚いたらしい同年代はキョロキョロ周囲を見回し自分らしいということに気が付くと軽く頭を下げ、そのまま犬に引っ張られて行った。
「大丈夫か? あいつ」
「いつもあんな感じだなぁ。お。シズー」
「潤さん? アレ? 有坂?」
不思議そうに見てくる鎮。
「二人ともおはよー」
いや、鎮。その反応はなんか違うだろっ!?
「おっはー、シズ、たけちゃんにこの書類の記入教えてやってくれる?」
願書と思わしき封筒を鎮に渡すおっさん。不審そうに封筒を確認し、驚いた表情で鎮が俺を見てくる。
なにか、勘違いと誤解が生じてる気がしてたまらねぇ。
「高校行ってみるんだな! じゃあ、うちで記入しようぜ。朝飯くらい食ってくだろ?」
あっさりおっさんは拘束を解いた。
ただ、そのまま拘束は鎮が引き継いだんだが。
すでに頭の中で勝手に状況整理をつけたらしい鎮が俺の腕をつかんで歩き出す。
俺は行くなんて一言も言ってねぇんだがなぁ。
「うちの身内も行くし、ミホちゃんも通ってみようって言ってたらしいし寂しいことにはならなさそうだよなー」
「他、揃わなきゃ寒々しいと思うぞ?」
教室に教師含めて二、三人とかって。
「ほぼマンツーマン授業? 贅沢ー」
鎮。その発想は間違ってる。
その状況なら翌年には学校存続してねぇって思うぞ?
「もう少し常識を考えろよなぁ」
ああ、うぜぇ。
マサムネ君お借りしております




