11/18 有坂と
「有坂!」
晴れた朝、ねぐらに帰ろうとしてると聞き覚えのある声で呼び止められた。
「お前から声かけてくんの珍しいな? 千鶴になんかあったか?」
日生んちには妹を預けてある。こっちのかすかな心配をよそに深い緑の目を瞬かせて、あっさり答える。
「ないよ?」
「んじゃ、なんのようだよ」
「うん。ちょっと調べてたんだけどさ」
「なにを?」
なんだかんだ言ってここのうちの連中は自分ルールに忠実だ。
人のルールにももう少し興味をもてと言いたい。
「定時制高校」
まだ、調査してたのか。
「イラねぇって言っただろ?」
「入学金は公立なら六千円くらいで、授業料は免除。制服教材費は流石に実費。通う気さえあれば、いけるんじゃないかな?」
ほんっと話を聞かない。
は?
六千円?
「で通信制の場合はさ、メール授業とかレポート提出がメインで年間二十五日以上の出席なんだって」
いや
「お前、なんだってそんなこと調べて」
「普通にネットで検索できたけど?」
そうじゃねぇと思う。
「見てて思ったんだけどさー。多部制の定時制が近所にあったら良かったのになって」
「多部制ー?」
「午前・午後・夜の部ってあって、単位の回収がしやすいらしいよ?」
「三部共でたら3日分かよっ! どんだけ勉強好きなんだっ」
それに軽く言ってるが教材費が高いんじゃねぇのかよ。
「ああ」
鎮がにっこり笑う。
あ?
「よかった。やっぱ、興味あるんだ。高校」
殴ろうとしたが軽く避けられた。
「つーか、お前が気にするこっちゃねぇだろうが」
「だってさー。気になった分は仕方ないだろ? 調べ出してたし」
「一旦、帰ってから登校だろ? 遅刻するんじゃね?」
「んー。この時間帯ならまだ余裕。心配してくれてサンキュ」
はぁ!?
心配してねぇよ!
さっさと行けって思ってるだけだって!




