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10/27  見知らぬ朝。

 父さんが帰って来てからふつりとてーての気配が消えた。

 父さんは知らない人でぱてぃが良かった。

 でも増えた家族は好きだと思う。お兄ちゃんやお姉ちゃんたち。ちっちゃい妹たち。

 ぱてぃがメールで『子供なんだから、ちゃんとわがまま言って甘えるんだよ』と書いてくれる。

 でも、そんな気にはなれなくて心細い。

 涼維と一緒にべたべたする。

 涼維が一緒なら大丈夫。

 でも、てーてが感じない。

 遠いところにきてしまったから?

 海が遠かった。




 今の住んでいる場所は海のそば。

 父さんの可愛がっている蛇は少し嫌い。

『あいつ』はキライ。

 兄さん達と妹達。それと父さん。

 バタバタしてたけど、悪い感じじゃなかった。

 母さんが同じ家に暮らすようになったのは、二年後だった。

 甘く明るい笑顔。

 笑顔を返すたびに心が重い。

 母さんをかまって希望をきいてやってる姿を見ると、父さんは母さんの味方なんだなぁと思う。

 父さんのそばにはいつも蛇がいる。

 実はこっそり動いてたりするんじゃないかという心境にかられる手首近くまで彫られた蛇の刺青。だから夏場でも長袖だし、基本的には表に出ることは少ない。

 そして『サマンサ』と呼ばれる蛇。

 俺はこいつがキライだ。

 てーてを思い起こさせる青緑なのに。



 ぱてぃがいた気がした。

 広いベッドのうえで転がる。

 柔らかくて気持ちのいい肌触り。

「りょーい?」

 ぱたりと探る。

 そういえば別の部屋で寝かされてたっけ?

 上半身を起こして周囲を確認しようとしたら世界が真っ暗に回った。

「涼維? 鎮兄?」

 学校に行っている時間だったっけ?

 ゴドじいも父さんも、おばさんも来ない?

 呼吸を整えてゆっくり目を開ける。




「ここ、どこ?」




 広いベッド。テーブルにシングルソファ。枕元にあるサイドテーブルにおかれたシェードランプ。電話。メモ帳。光を遮っているカーテン。


「りょうい?」

 呼びかけても返事はなくてぞくりと寒気がはしる。

 見知らぬ場所で。

 呼んでも誰も答えてくれなくて。

 涼維がいなくて。


「起きたのかな?」

 聞き覚えのない声。

 知らない大人の声。

「やっ!」

 こわい。

 ピタリと彼は動かない。

 ゆっくりとこちらを伺うようにかがんで、やさしく、ゆっくり口を開く。

「ラフィエート様を、パテルを呼んできましょうね」

 ぱてぃ?

「ぱてぃ?」

「そうですよ。ですからベッドに戻りましょうね」




「いっしょいく」


 そう言った時、彼はかすかに困った表情をした。


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