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10/18 深夜の浜辺

 意識が、ないだけだ。

 海水に触れた状態でミツキねーちゃんの膝枕な弟。


 困った表情のミツキねーちゃんが手招きする。

 近寄るのが怖い。



「泣き疲れちゃったみたい。りゅーちゃん」


 生きているのがわかってホッとする。


「明日の夜ならもっとなんとかしてあげられたのにね」

 ミツキねーちゃんは月を見上げる。

 夏もこうして月を見上げた。

 死者を悼んでた人の横で。


 ここ最近、どうしてこんなにも『死』が近い。






 言葉に違和感を感じる。





 泣き疲れる?



 隆維が?

 涼維じゃなく?




 ミツキねーちゃんが微笑みながら隆維を撫でる。


「……約束事はよーく考えないと危ないのよ?」



 同感なので頷く。



「特に約束に慣れたものと交わす場合、裏も考えなきゃいけないの」



「とぉっても危ないから。しずめちゃんも気をつけなさいねぇ」


「連れて、帰るよ。寝ちゃってるんだろ? そのままじゃカゼ、ひくし」

 かえしてもらえないような気がしてこわい。


「そうね。かえしてあげるわ。でもねぇ、」


「なに?」


「これからりゅーちゃんちょっと大変よぉ」

 ふふっと悪戯っ子の笑みを浮かべるミツキねーちゃん。



「何が大変?」



「きっとすぐわかるわぁ。じゃあ、早く連れて帰ってあげてねぇ」


 俺が隆維を抱き上げるとミツキねーちゃんは立ち上がって濡れた裾を捌く。

「あ。服、」


「じゃあねぇ」



 見送って、隆維に視線を落とす。




 なんで、泣いていたんだろう。


 どくどくと不安が鼓動を早める。


 泣いているのはいつも涼維で隆維はそれを不思議そうに眺めていた。

 転んで怪我をしたのは隆維でも泣いて慌てるのは涼維だった。

 不思議そうだった振る舞いは気配を潜めるようになって、「痛いのは嫌い」と言うようになった。


 そんな隆維が泣き疲れる?



 帰った俺が聞いたのは「ミアちゃんがお熱」

 心配したおじさんの手を払って、俺にしがみついた隆維のおじさんを拒絶する言葉。














父様ぱてぃにあいたい」




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