10/15 うろな中放課後
「芦屋先輩、こんにちはー」
「あれ。こんにちは」
「日生隆維でーす。剣道大会で瞬殺されましたー」
「あ。久し振りだねー」
「先輩って妖怪退治にきた陰陽師ってマジですか?」
「そうだよ」
自信たっぷり快活に答えてくれる芦屋先輩。
和美人。ウチの兄弟内では無縁のさらりと癖のない黒髪。黙ってればまさに大和撫子なんだろうと思う。
いろいろ評判通りだと思う。かっこいいよねー。
「でも、妖怪なんていないでしょ? うちの近所でも、変な話は有るけど噂だし」
「そんなことないよ! 妖怪はいるんだよ」
「ふぅん」
「それより噂ってどの辺りなの?」
「うちの近所のどっかに祠があるんだって。ビーチの周辺かなぁ。兄貴たちはありえないって笑うけどさ、海で無くしたモノが返ってきたって噂もあるんだよね。果物や花を置いておくと替わりにそこに無くしたはずのものがおかれるんだって」
実際現実味のない話題だ。
誰かが食べたり、拾ったものを置いていっただけとも取れる。
食べちゃいると思うけど。
「つまんない話だよねー?」
「それ、あぶないかも」
「あぶない?」
「海でなくなった人を呼びかねないかも」
真剣な表情。
「まっさかぁー。ホラー映画じゃないんだし、海でなくしたアクセサリーや小物が戻ったって微妙な噂しかないよ? あ。稲荷山先輩、こんにちはー」
白い髪とどこかキツイ感じの先輩。
大会前とかはもう少しゆるかった気がするんだけどなぁ。
「うちの兄貴が近いうちにおしゃべりしたいからデートに誘っといてって。あ。これ兄貴のアドレス」
「は?」
驚く二人から一歩離れて。
「それじゃあ伝言、伝えたから。芦屋先輩、稲荷山先輩、さよならー」
「い、稲荷山くん、日生くんのお兄さんとデートなの?」
芦屋梨桜ちゃん、稲荷山考人君お借りしました




