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10/13 雨 糾弾

 まずい。

 朝一番でよろしくって宗一郎くんに頼んで鎮を迎えに行ってもらったが、少々、まずい。

 ミホちゃんの件で話を聞きにこられることも考えて両方が同じ場所にいない方がいいと思って呼び戻したんだが、違う意味でヤバい。

「鎮。千秋に好きなようにさせすぎだ」

 ちなみに宗一郎くんはかなり機嫌が悪い。

 面倒だ。

「でも、ちゃんとミホのことは千秋が悪いって言っとかなきゃいけないと思ったんだ。にゃんこのことがあったとしてもダメだと思ったんだ」


 ちゃんとお話聞いてくれないかな?


「喉元が隠れる服に着替えてきなさい」

 不思議そうに首を傾げる。

 自覚なしか!?

 跡が消えるまで学校休ませようかなぁ。

 特に部活も入ってないのは幸いだな。

 イロイロと活動させてる分、うろなでは個人特定されやすい。千秋に関して言えばそれが抑止力のひとつだ。

 健くんが逃げ切ったか、捕まったかによっても本来対応は変わるけれど、どちらにしても話を聞きにこられた時、喉元の痕はまずい。


「その跡を見たらチビどもが心配する」

 気がついたのか喉元に手を当てる。

「目立つ?」

「そうだな」

「着替えてくる」

 頷いて見送る。本当にそうしてくれ。


 ずるりと何処かで這いずる音が聞こえる。

「サマンサちゃんも見つからない場所か、水槽に戻っていてね」

 溜め息が出る。

 かみ合わない会話って疲れる。



 ああ、工務店の方にもお礼とお詫びに行かないとな。


「よく言えるね」


「さーやちゃん?」

「あっちゃん。聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「もちろん」

 ダメって言いたい。

「かえってきたくなかった?」

「なに言ってるの? ここにいるのはちゃんと俺の意思だよ?」


「じゃあ、どうして隆維や涼維があっちゃんを認めてない状況をほっておくの? 愛せないんなら捨てたまま拾い上げない方が辛くないよ。好きなだけで愛してもいない。あの子達が気がついてないと思うのはバカにしすぎてる。義務だけで『べき』だけで差し伸べられる手をとるフリをしなきゃいけないのは見ててイヤだ」

 淡々とまくしたててひとつ息を吐く。


「ねぇ、鎮や千秋、隆維や涼維。それぞれ引き取りたいって言われてたのは知ってるよね。きっとあっちゃんが帰ってこなければそうなってた。あーやちゃんが日本に戻ってきたのは、子供をみててくれるあっちゃんがいたからだものね。ルシエちゃんは育児にはタッチしてなくってまわりが育ててたって聞いてるもの」


「戻ってきてからのあっちゃんは中途半端だよ。子供がいるからって本当にしたい事を諦める理由にはならないんだよ。あっちゃんもあーやちゃんもできることを放棄しちゃってるのがすごく悔しい」

「さーやちゃん」

「だいたい、千秋と鎮のあの関係性を作ったのあっちゃんじゃない!」

 耳が痛い。


「血の繋がった親なんていなくても本当の親がいれば幸せになれるんだよ?血のつながりが家族じゃないんだよ?」


「そんなことぐらいは」



「父さん、おばさん、少し声落とそうよ。チビたちが聞いちゃうよー」


言い返そうとしたところにかけられた隆維の平然とした声が気まずさを誘う。


「それと、俺と涼維は別に気にしてないからね」



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