10/12 旧水族館のよくある光景
鈴音の見る光景
気まずい空気。
「隆維、相手は小学生」
「ミラちゃんも、ちょっかいかけてないでね」
芹香ちゃんは何がおこっているのかよくわからないと言う表情でどこか喧嘩ごしな三人と止めたり宥めたりしてる二人を見ている。
隆維おにいちゃんとミラちゃんははやとくんと仲が悪い。
こういう時は出もこっちに連れてくれば良かったかなとも思うけれど、従姉妹の岡本栞・誓姉妹のところへこの連休は泊まりにいっている。
ミラちゃんは隆維おにいちゃんたちのお母さんの違う妹。
隆維おにいちゃんたちの青い目とも芹香ちゃんの黄緑色とも鎮お兄ちゃんたちの深緑の目とも違う枯葉色。一番近い色の感じは芹香ちゃんの目の色だけどやっぱり違う。
鎮お兄ちゃんがいればここまで喧嘩っぽくならないんだけどな。
「べるべるおねーちゃん、けんか?」
ノアちゃんが心配そうにきいてくる。
どちらかと言うと芹香ちゃんとノアちゃんは中立。
ミアちゃんは隆維おにいちゃんの味方。でも、ミラちゃんとも仲がよくない。
じつは本当の中立はノアちゃんだけだ。
芹香ちゃんはミラちゃんと仲が悪いし、わたしは隆維おにいちゃんよりだし。
あ、天音お姉ちゃんも中立かも。基本興味ないだろうから。
「わかろうとしないはやとが悪いんだろう?」
「ミラ文章もんだい嫌いーわかんなーい。おべんきょう嫌いー」
一見、ミラちゃんがはやとくんを擁護してるように見えるが違う。
「天音おねーちゃん、組み手やろうよぅ」
武闘派なのだ。そしてはやとくんは体育も苦手だ。
ちらりと見下す視線をおくって笑う。
「はやとクンも混じる?」
宗兄は他に来ているお客さんの面倒をおじいちゃん達とみている。
雨だし、連休中だしでいつもより少ないけれど、ぽつぽついるのだ。
「ナニけんかしてるのかな?」
濡れた黒髪、首にかけたタオルと無地のシャツにジーンズ。
鼻に届くのはプールの匂い。
「夏菜子おばちゃん」
芹香ちゃんがそう呼んで、
「夏菜子ねーちゃん」
と、隆維おにいちゃんが直す。
「今日……-ルの日だから」
涼維おにいちゃんが指差す先にはポスターが貼ってある。
『ダイビングスクール・生徒随時募集中。活動日第二土曜日』
お姉さんはスクールの生徒さんなんだろう。
「ケンカはダメよ」
「はやとが頭悪いだけだよ?」
「隆維!」
涼維おにいちゃんが怒ったように声をあげる。
隆維おにいちゃんが嫌いを全面的に表明するのは珍しい。
「お勉強、頑張ってね。上手に教えれるようになるのもお勉強だね」
お姉さんはそう言って手を振ると奥のフードコーナーに行っちゃった。
「うまく教えられない俺が悪いみたいじゃん」
ふくれっ面な隆維おにいちゃん。
はやとくんは少し、居心地が悪そうだった。
でも、いつもと変わんないかな?




