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10/12  未開業病院

「おじさん!」

 鎮が少女を抱いて駆け寄ってくる。

 その後ろには車と三人の人影。

 中に入るよう促す。

 もうじきゴドウィンのじーさんも着くだろう。

 ルシエの大伯父であり、一線からは引退した脳外科医。

 人が行方不明、および日本での学生中に隆維と涼維に降りかかったトラウマ原因を伏せた挙句こっそりケア要員、監視要員としてそこにいた存在。

 ありがたいんだか、腹立たしいんだか。

 だが、こういうときは役に立つ。

 ピアスだらけで栄養取ってるのか疑問に思えるガリガリの男が建物に入っていく、鎮を見送っている。ミホちゃんをかな?



「応急手当はしたわ」



 セミロングの飄々とした女性。


「ありがとうございます。お手数をおかけいたしました。お茶でもいかがですか?」

 見透かすような笑い。

「ありがとう。ご相伴させてもらうわ」

「姐さん?」

「駐車場がありますからそちらにどうぞ。秋の雨は後で冷えますし」

 車を運転している男性に建物の案内灯を点けておく事を伝え、ピアス男と女性を応接室へと案内する。



 応接室を覗く鎮。

「おじさん、第二治療室でよかったの?」

「ああ。宗一郎君がゴドのじーさん呼びに行っているから。鎮も軽く何か食べなさい」

「でも、」

 不安が多く、ぐずる鎮。

「食べたら、ミホちゃんについててあげるか、じーさんの手伝いがすぐできるようにしておきなさい」

「でも、千秋はっ!?」


 動揺している。


 たぶん、ミホちゃんに怪我させたのは千秋。

 おそらく、千秋が他に攻撃するとしたらサツキちゃん絡みで気に障ることを言った相手。


 だけど、

 人が多いところでは行動を起こさない。

 自分を抑えつけうる者のいるところでは行動を起こさない。

 基本は自分より弱い者に対してのみしか行動を起こさない。


 うん。困った奴だ。



「おにいちゃんだろう? 弟を信じてやれないのか?」


 呼吸を整えて鎮がまっすぐに見てくる。


「わかった」

 そう言って踵を返す鎮を見送る。















「それで、おじさんは信じてるのかしら?」



 女性の楽しそうな声。




「もちろん、信じてる」




 言葉と共にお茶のおかわりをカップに注ぐ。

 用意したお茶菓子はポルボローネとアップルパイ。

 予備にきゅうりのサンドウィッチ。



 疑うような女性の眼差し。

 『嘘は見抜くのよ』と言われているような心境になる。



 だけど、確かに信じてはいる。


























「千秋は決して……、自分の対処能力を超えることはしないと」






相変わらずお名前は出てませんが猫塚千里さんお借りしております。


ものすごく微妙な信じ方。

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