10/12 電話中
電話中
「うん、何かわかるか?」
『何かってねぇ、さっきのワイドショー系ニュースでは不良の火遊び~って。ちょっと怒んないでよ。俺が言ったんじゃないんだから』
「公」
『あ~こっちでわかる範疇は調べるけどさ~、堂島のアンちゃん達に話し通してみるよ。ところでうまくいってるのー?』
なにが?
PCでコミュニティを幾つか確認していく。
『鍋島 サツキ』の悪評がちりばめられている。
「一人暮らしなら何とかね」
『違うってー。一人暮らしなんて湯沸しポットと電子レンジと紙食器があれば食には困らず生き延びれるじゃん』
ソレはソレでどうかと思うぞ?
『だーかーらー。ご主人サマとはうまくいってんのー?』
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『まってヤバイの? 天音ちゃんも鈴音ちゃんも特に何も言ってなかったけど?』
どう言えばいいんだろう?
「今日の朝食は白ご飯とレトルト味噌汁と焼き鮭。昼夕用にいい感じに煮込まれたカレーのなべがキッチンに置かれてる」
チキンカレーかなー?
沈黙が返ってくる。
まぁ、わからなくもない。
「ちなみに食材買出しメモとオススメ店舗メモ付き。不足してた調理器具の買い足し、片付けそびれてたダンボールの片付け、衣替えの段取りまで抜かりなく」
『やってもらったの?!』
「うん」
ここ一ヶ月の間にざっくりと。かなり行き届いた気配りだった。対価的に数回泊まっていったけど、もともと、いくらでも泊まってもらうのは構わないし、そのたびに生活環境がより良くなっている気がするし。
『そ、ソレは望みをかなえるって言うか、主従逆転って言うか、主婦業に徹してもらって好きなことができるように資金稼ぎとか、周囲調整に回れるようにするほうがいいのかもねぇ。とにもかくにもあーりーえーねー』
「うん。ありえないよね。まだ友達って位置関係にこだわってるし」
『イヤ、そこはソレ譲っとこうよ。フレンドプレイを強要されてるとかって思っとこうよ。ね。それよりさ、いい加減、カレーは匂いだけでも避けたくなるぐらい嫌いなんですと馬鹿正直に言わなくてもいいけど、苦手だってことぐらいそれとなく伝えておこうよ! 変な傷を深くすることないよね?』
フレンドプレイ……
公の発想ってよくわからないな。
『聞いてるー? 宗一郎にいさん!』
うるさいなぁ。
「聞いてるよ。今回の焼死については」
『自業自得的事故としてすでに完了処理判断されてるっぽいね。どっちかって言うとマスコミにネタが流れすぎ。誰かが事前に準備してたみたいだ。いくら最近、面白いネタがなくて飛びつくには格好だったって言ってもさ』
昨日の今日で完了処理?
「そう」
『人の不幸は蜜の味。死人に口なし、家族もいないとなれば好きなように叩けるしね。他に面白いネタがないからしばらく引きずるかもね』
「鍋島先輩は明るくて素敵な先輩で、美女コンでも素敵だったよ」
『ま、ニュースやコミュニティではちょうどいいから叩かれると思うよ? 真実はにいさんが感じるものでいいんじゃない?』
「そう、だな」
『じゃあ切るね、電話連絡もあると思うし』
「ああ。ありがとう」
『どーいたしましてー』
電話が切れる。
カレー鍋を見る。
密封容器に移し、袋に入れる。
さっきメールで怪我人が出たと鎮先輩が慌ててた。もしかしたら人手があったほうがいいかもしれない。
カレーが好きだという人もいるかもしれない。いたらプレゼントしようと思いつつ部屋を後にした。
宗一郎くんはカレーが嫌い。でも、先輩は週に一度はカレーを作り置き。




