表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/823

10/11 夜。

 ザーザーと耳鳴りがする。

 TVから聞こえてきた音が聞こえない。

「ちあき」

 聞こえない。

 何も聞こえない。


 何も聞こえない。


 携帯が震える。


 着信がうるさい。



 携帯を投げ捨てる。





 気がついたら暗い海。

 波が荒れ雨が降っている。

 耳鳴りがやまない。

 何も聞こえない。


 好きなのに。

 もう見れない。太陽のような笑顔を。

 聞くことができない。

 あの声を。

 許せない。

 どうして何もできない?

 何もできなかった?

 踏み出せなかった?

 だれが、ナニがあのヒトを燃やした?



 サツキ、さん。


『路上で17時50分頃、焼死体で……』


 おいしそうに食べてくれて、そっけないようでそんなことなくて。

 好きで、

 いつしかサツキさんのことを考えると冷静さを欠いていて。


 サツキさんに嫌われることが怖くて。

 その言葉に左右されて。




「何も聞こえない。聞きたくない」



 服に海水と雨が染み込む。

 濡れた砂を掴む。

 なぜ、サツキさんが燃えなきゃいけなかった?

『なぜ』と『誰』が繰り返される。


 何もできなかった。何もしなかった。嫌われたくないなんていいわけだ。

 ただ、怖かっただけ。

 他の誰の評価も評判も本当はどうでもよくて、都合がいいから、不都合がないから合わせていて。

 だから嫌われるのが怖いと思うととたん、動けなくなった。

 だから嫌われないなら料理を提供するだけの存在と思われていてもよかった。

 少しでもそばにいることができるのならそれでも嬉しかったから。




 潮の匂い。


 耳鳴りがする。


 何も見たくない。何も聞きたくない。何も知りたくない。


 知りたいコトはダレが燃やしたか。


 そいつの目的なんかはどうでもいい。


 ダレが僕からサツキさんを取り上げたのか。

 うん。それだけは知りたい。


 ミホや健は使えないんだよなぁ。

 こーゆーときくらいもう少し使えればいいのに。

 こういう時に使えそうな知り合いってそう居ない。

 どう、動こう。

 どう動けば、近づけるかな?


 波が荒れている。

 それでも、足を取られたり、転ぶことはない。


 海での失せ物を供物と引き換えに返してくれる蛇神迷信。

「サツキさんを返してくれるなら」

 笑いが込み上げる。


 サツキさんが失われたのは海じゃない。

 無意味な想定。迷信だし。


 僕の命くらいなら捧げるのにね。





『人間どもに不幸を!』10月11日夜のニュースとリンクしてます。

サツキさんのお名前お借りしてます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ