9/14 昼下がり
「手ェ出すなよ。千秋」
開口一番それか。
有坂健。 金居瑞穂・ミホと同じ小学校の同窓だ。
はっきり言えば、元・苛めっ子なわけだが。本人達はあんまり意識してない。
まぁ、昔の話だし、それなりに今でも付き合いはある感じ。
「鎮、カモにされて黙ってろって?」
気まずげに視線をそらす健。
「前にあった時にさぁ、おねがいしたよね?」
コホンと空咳。
「鎮やウチの弟妹に絡むなって」
ため息を吐くとミホがびくりと身を健にすり寄せる。
「ちゃんと金は返したし、それとない理由付けもしといたよ」
まったく。
そーゆー問題じゃないんだよね。
「鎮へのケアはサンキュー。でもさ、カモにされたのはかわんないよね?」
「いや、名前も知らない初対面に金貸す方も貸す方だろ?!」
…………しずめ。
「注意はしとく」
「こっちも言っとく」
二人して軽く脱力。
キャッチセールス以前の問題じゃないか。
健やミホがどんな稼ぎ方をしようが構わないけど、身内が巻き込まれるのは困るし、対策は立てないとね。
「いつ返してくれたの?」
フォローは早めがいい。
「今朝だよ。鬼小梅、鬼嫁になったんだって?」
鬼嫁?
「いや、だって相手マゾなんだろ?」
……鎮、何を言ったの?
「えー。小梅先生お嫁さんー?」
きゃーっとはしゃぐミホ。
「おう、しかも母親になるらしいぞ」
そう言いつつ、ポケットから出したタバコに火を付ける健。
「健。タバコの害は周りの方がキツイんだから、俺のいないとこでやってくれないかな?」
巻き込まれ補導もゴメンだし。
お願いに快くタバコをもみ消す健。
基本悪い奴じゃないんだよね。
「小梅先生がママ。きっといいおかあさんになるよねー」
「俺は孕んでる姿が想像つかねぇけどな」
「えー。オンナだもん。ちっさいと体力とかで心配とかあるのかなー?」
首を傾げるミホ。
「よし」
唐突に健に抱きつく。
ミホが突発唐突なのは昔っからだけど、結構理解に苦しむ行動パターンだ。
「あのね。健は暫くヒマ減るよね?」
「まぁなー。今、いいみつぎちゃんと付き合ってっからな」
「わかったー」
うふふと笑うミホ。何を企んでるのかと俺と健は顔を見合わせた。




