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10/3 秋の料理部

岡本栞

「さーて。我らが料理部はー文化祭で軽食処を行うぞー」

 麻衣子部長が力をいれて声を上げる。

「私を含め食べ専の諸君は売り子であるー。当日の販売、前日までの下準備をー頑張るよーにぃ」


 ぶんぶんと手を振り上げてる姿を横目に眺めつつ、早川君と喋る。

「そっちのクラスの出し物はナニー?」

「輪投げと的当て。占いの小屋」

 早川くんがうんざりした口調で言う。

「ウチは舞台。衣装作成の手伝いかなー」

 転入生が主役ぽい。

 まぁ美人だもんねー。


「そういえば菊花先輩」

「んー?」

「千秋先輩、今日も不参加ですかー?」

 二学期になってしばらくしてから千秋先輩は料理部に顔を出していない。

 先輩たちはもともと『気まぐれ参加許可出してるから』で済ませてしまっている。

 でも、千秋先輩の話題になると微妙そうな表情になるので追求しづらくもある。

 たぶん、何か問題があるんだろうけど、どうしようもできないってところだろうか?

「んー。聞いてないなー。最近はさっさと帰ってるみたいだしなー」

 もの思わしげに天井を仰ぐ菊花先輩。

「鎮に聞いたところ、まっすぐ帰ってるわけでもないっぽいし、連絡手段は遮断してるらしいから捕まんないらしいよ?」


「知りたいんなら山辺にでも聞いてみるか?」

 嫌そうな表情で早川くんが言ってくる。

 なぜ、そんなに嫌そう?

「だって、やっぱり先輩来ないと寂しいしちょっと心配かなぁって。山辺くんでわかるの?」

 すっと視線を外す早川くん。

 そういえば最近仲がいいらしいのは聞いている。

「たぶん。鎮先輩の周囲情報なら網羅してると思うから」

 そう言ってため息をつく早川くん。

 ああ、山辺くんって鎮先輩と仲いいもんね。ほぼ家族ぐるみのお付き合いっていう話だ。

「えー。鎮もロクに動きがつかめなくて心配してる状況だよー?」

「えー。山辺が聞かれもしないのに鎮先輩にネタばれするわけねぇじゃん。鎮先輩が心配して取る行動をそっと観察してるに決まってんじゃん。性格かなり悪いんだから」

 えっと?

「山辺くんと鎮先輩ってどんなお友達?」

「岡本、それ、おれがわかると思うか?」

 真剣な眼差しで見つめられ困惑。



「そこな食べ専どもー!!」


 麻衣子部長の怒声が飛ぶ。

「文化祭までに売り子服と内装準備と千秋の準備をちゃんとするよーに!!」


 ぇ?!



 準備品に千秋先輩の名前あり?!


「栞ちゃんはもう少し調理の腕を上げましょうね」

 にっこりのほほんと愛子先輩が微笑む。

 見かけによらず、スパルタなんだよね。愛子先輩って。


「私のクラス、ホラーハウスするらしくって事前準備班だからちょっと忙しいの。こっちの準備、がんばってね」



 愛子せんぱーい。

 私もクラスで衣装担当ですー。

 って、いいたい。

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