8/26 ゲリラ豪雨
急にやって来た隼子ちゃんに拉致られて北の森。
いいんだけどね。
問題は、隼子ちゃんとはぐれたことかなぁ。
鬱蒼とした夏の森。
最近ゲリラ豪雨が多かったりする分、青の匂いがキツい。
ところによっては、乾ききらずぬかるんでいる。
隼子ちゃん、転んでなきゃいいけど。
そう言えば、もう少し行ったら雪姫ちゃんの家があったよなぁ。
隆維・涼維が少し、元気がなさそうって心配してたっけ。
昨日見かけた時はゴシックロリータ系の服装でちょっと驚いた。
白い髪、白い肌、白のふわりとした衣装。黒のレースが大人ぽさを醸し出す。
その横にいたヒトが赤いゴシックロリータで、すごく対比だった。
ツインテールに小さなティアラ。鮮やかな赤毛がふわりふわりと揺れていた。
いないかもしれないが、挨拶くらいしてみるかと足を向けかけたタイミングでポツリとしずくがあたった。
「え?」
見上げた空はいきなり真っ黒で。
「ぇ? ええええーー」
瞬間、悩む。
雪姫ちゃんが在宅していることを期待して雨宿りを頼みにいくか、一旦駐車している車に戻ってから隼子ちゃんを探すか。
隼子ちゃんは森に慣れているとは言いがたい。
そう実際のところ悩む余地はない。
車に戻っていてくれてるといいんだがと思いつつ、身を翻す。
ぽつりとあたった雫が数を増やすのはあっという間。視界がなくなるほどの強さで雨が叩きつけてくる。
ゲリラ豪雨だ。
本当なら雨のしのげる場所でじっとしてた方がいいような気もするが隼子ちゃんが気になる。
枝葉の下を通るときは少し、マシ。それでも間断なく降り注ぐ雨は視界を奪い、体力を削る。
真剣に隼子ちゃんが車に帰っていることを願う。
何でこういうときに限ってスマホをもってきていなかったのか。
「ああ、もう! 戻っててくれよ」
車に辿り着くと隼子ちゃんが驚いた表情でドアを開けてくれた。
ほっとすると同時に安心の反動か、悪態が口をつく。
はやと君が心配そうにこっちを見てくる。
はやとくん?
隼子ちゃんの遠縁の子で、それまでの保護者の人が面倒をみれないので隼子ちゃんのお母さんが引き取った男の子だ。
はやと君も濡れてないようで何よりだ。
はやと君に見つけてもらった埃っぽいタオルで水気を少しでも拭う。
埃っぽさに文句をつけつつ、エアコンから吹き付ける冷気が気になる。
頭痛がする。はやと君の視線が気になる。
車で挨拶をして一緒に森ではぐれた。
頭痛がする。
何かおかしい。
「しずめ?」
隼子ちゃんの心配そうな声。
「なにー? ウチで下ろしてねー。シャワーあびてきがえねぇとなー。お。雨やんだなー」
適当に逸らす。妙に思考がまとまらない。
久しぶりに自宅のシャワーを使う。
うちの中には人の気配がない。
母さんは研究エリアだろう。
着替えるとある程度スッキリした。
そろそろ、ARIKAの方に戻るか。




