8/25 バザー③
天音
隆維涼維と別れてぶらり。
本を売ってるブースがあったり、汐ちゃんがお店番してたり。あとで覗きに行こう。
キョロキョロしていると霧島先輩が大きな熊を抱えた梅原先生に叱られてた。あの商法のセイかな?
何かと波長があった気がしてそちらを向く。
そこには日本人形がいた。
しかも夜な夜な髪が伸びて、適度に散髪をしてあげないといけなさそうないわゆる市松人形のような日本人形だ。
「水鏡先輩」
さらりと金髪を揺らしてこっちを見てくる。
「この子も10円ですか?」
こくりと頷く水鏡先輩。
私も頷く。
そして財布を出して10円を渡す。
「この子ください」
商談は成立した。
「名前、決まってるんですか?」
「木綿」
そのまま隣の店に流れる。
「いらっしゃい」
「おはようございます」
いろんな柄の布が売っている。
少し悩んで柄じゃなく大きさで布を見る。
「どうつかうのかしら?」
「この子を入れるのに」
にこにこ聞いてくるから答える。
見繕ってあげる。と笑いながら布を幾つか分けていくお店のヒト。
「何色が好き?」
「青とか、赤とか深緑」
そうこうしているうちに横が騒がしくなってきた。
10円じゃなくて10万で買うとか、100万で買うとかとんでもない金額が会場内で踊っている。
たしか芦屋先輩と白髪の稲荷山先輩。リトルクイーンの奏ちゃん。両手に花?
妖怪退治にうろな町に来たスパイ陰陽師の美少女と地元民な助手の男の子。
訳ありそうな白髪に、少し斜に構えたような態度仕草。
それでいて振り回されている不幸な苦労人ぽさ。
コレで稲荷山先輩が妖怪だったりしたらかなり萌えるのになとちょっときゅんとしてしまう。
昨日、うちゅーじんさんに出会ったセイか、思考がちょっとそっち寄りぎみで困ってしまう。
一歩、水鏡先輩の店舗から距離をとって眺める。
うん。なんかいいな。
入り口のほう、小学校の教師小林先生夫妻の店舗付近に見覚えのある姿を見つけた。
「はい。あんまり振り回したりしなければ解けないからね。300円でどう?」
ひらひら見せられたのは赤い袋。
風呂敷でかばんを作る要領で作ってくれたらしい。
300円を渡す。
「よかったらお店にもきてね。商店街の手芸店よー」
頷くと『木綿』を受け取って袋に入れてくれる。
「ありがとうございます」
「こちらこそー」
『木綿』を受け取って布地屋さんの店舗を離れる。
目指すのは入り口だ。
「おじい様」
水鏡栗花落先輩
芦屋梨桜先輩
稲荷山孝人先輩
狐坂奏ちゃん
お借りしましたー




