8/25 バザー②
涼維
隆維たちから離れてバザーの出店を見て回る。
昨夜はあんまり寝れなくて今が眠い。
だから見て回るといってもぼんやり見るとは無しで。
だから、この遭遇には正直困惑していた。
正しい対処ができる精神状態ですらない。
「あら」
認識されたーー。
「久しぶりね。涼維君」
名前、覚えられてるーーー。
「お、お久しぶりです。霧島……先輩……」
脳裏をよぎる剣道大会での一幕。そして水着コンテストで町の書店で死蔵されていた写真集を完売させる魔性の魅惑。
そして個人的には昨夜のトラブル。
ヤバイ。
危険すぎる。
信号は赤でブレーキは壊れている感じ。
ちゃんと対処しないと。
気合を入れて正気を保つ。
それが重要課題だ!
「ねぇ」
その爆弾は耳元でカウントダウンを始めた。
女の子の甘い香り。
なぜか耳元で聞こえた甘い呼びかけ。
「涼維君」
名前を呼ばれてすいっと意識が白に染まる。
「このアクセサリーは木で出来ているのは分かるよね?」
商品の説明をされてはじめて木製アクセサリーを売っているということに気がつく。
そのことを自覚する前に自分がなんと返事したかも覚えていない。
そうここはバザーだ。
シンセイなる稚い子供の学び舎、小学校の体育館なんだ。
木工のアクセかぁ。
こういうのって意外と手間がかかるんだよね。隆維は片手間に作るけど、俺はいつも最後の仕上げまでいかないんだよねー。
イラつくんだよね、細かいトコとか。
「涼維君、木は加工した後でも水分を吸いやすいって知ってるかしら?」
ふと流れてきた豆知識。
「そ、そうなんですか?」
木製品すごいな。
「そう。空気中の水分程度ならばそこまで吸わないんだけれども、」
ふんふんと興味深く聞く。
さすが高校生物知りだなー。
「人の水分、つまり汗って意外と染みる物よ」
「へ、へぇ~」
……汗?
「―――――ちなみに、女性の汗が一番かきやすい部分は胸の下。特に巨乳の女性の胸の下は、この時期、蒸れるのよね。私、それが我慢出来なくて、この中の商品のいくつかを汗を取るのに使ってしまったかもー」
さらりと説明しつつ、その仕草できっとグラビアモデルより魅惑的といえるその肢体を示す。
露骨でなくさりげなく確信犯なところがあざとい。
「で、買ったんだ」
「気がついたら買ってた」
隆維の突っ込みに頷く。
天音ちゃんが手の中で何かをもてあそびながら『馬鹿じゃないの』と言わんばかりの冷たい視線を投げかけてくる。
「で、これ、昨日のお詫び、じゃなくてお礼に。えっと、胸が大きくなるお守りに、なる、かも?」
にこりと天音ちゃんが笑う。
「さいっていっ!」
「ねぇ、隆維。このべたべた気持ち悪いのって」
「そこの店で買ったスライム三色合体合わせて150円」
霧島恵美先輩借りました。




